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雅樹は、まずいなと眉を寄せて利明の腕に触れた。彼が女に免疫がないのを、雅樹は知っていた。母親がいないからとか、そういう事が関係しているのかはわからない。だが、利明が女に対しての接し方に戸惑うと、震えながらうつむく姿を昔から見てきた。やはり、雅樹の手には彼の振動が伝わってきた。
「すまん、すまん。俺が悪ふざけしたんやから、こいつは悪くないで」
雅樹は首筋をこすりながら、花音に近付いた。
「痛くしたんは、ここか?」
花音の横に立つとそう言って、雅樹は彼女の腰をなで回した。花音は可愛らしく頬を赤くし、悲鳴をあげた。
「何や、お前変態か?超キモッ」
花音の友達が、声を震わせながら言った。先ほどまでの勢いは、無くなっていた。
「マジ最悪や。行こっ」
驚き、体を強ばらせた花音の手を引いて、化粧の濃い2人の女は教室の方に歩いていった。掲示板の前に集まっていた生徒たちが、笑い声を上げながら拍手をした。
「お騒がせしやしたっ」
雅樹は手を掲げながら頭を下げて、利明の方へと戻った。利明の隣には前屈みをした沢目がいて、ごめんなと謝っていた。
「オカバ……すまん。調子乗りすぎたわ」
雅樹が笑って謝ると、利明は下を向いたまま首を振った。
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