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顔を上げると利明は、眉間に皺を寄せ、笑顔で言った。
「女は苦手や」
「あいつらは特別やろ」
沢目は、花音たちが入っていったA組の教室内を覗き込むかのように、背伸びをした。一段と背がたかくなった彼を、利明と雅樹は見つめる。
「なんや沢目、あいつら知ってるんか?」
雅樹が言った。
「人違いやなければ多分、西中やったと思うで。バスケの練習試合の時に見かけたんや」
そう言うと、沢目は唾を飲み込んだ。喉仏が大きく動いた。
「それで何が特別なんや」
ぶっきらぼうな口調で雅樹は聞いた。利明は特に興味もないような顔をしたまま、沢目の口元を見つめた。
「西中の体育倉庫をな、俺たちの更衣室替わりに用意されたんや。西中の奴らは、まだ体育館に入ってなくて部長に案内されて行ったんやけど……」
沢目は話を止め、辺りを見回した。そして囁くように声を抑えて話しだした。
「倉庫ん中から、さっきの花音とかいう女が出てきたんや。あそこまで化粧はしてなかったけど、同じ香水の匂いやったで。そんで、後から男が出てきた」
「なんやそれ。倉庫で何してたんやろ」
利明が首をかしげ、言った。おいおい、と雅樹は笑いながら手を振った。
「まさか、倉庫でしてたとか?」
雅樹が声を震わせて言うと、沢目はにやりと笑い、うなずいた。
「なにをしてたん?」
利明は話の内容が理解できず、雅樹と沢目とを交互に見ながら2人に尋ねた。
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