27. from unittest import IOP

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 そう彼女に手塚さんは指摘すると、さり気なく俺の方を見るように視線と顔で彼女を誘導した。 「あっ・・・・・・はい。手塚副主任」 「白川先輩ごめんなさい」 「いっ、いや・・・・・・」  副主任が彼女について指摘したのは俺と妹の関係だけでは無い、俺の境遇と同じ様に記憶の園の技術を使って記憶データを保管した家族にとっては、大切な身内は肉体と言う物を失っただけで有って、精神や魂はクラウドに移されている、そう生きていて死んではいないのだ。そういう意識の方が圧倒的に強く、またそんな声を多く耳にしている。だからそんな人達が彼女の言動を聴いたものなら、確実に彼等から総スカンを喰らう事となる。  その為今のうちに不注意な言動が出た場合、今回は指摘されたのは笹原だけだったが、彼女だけで無く皆がそのことについて注意を受けた。 「それより笹原、ご愁傷さま」 「あっ・・・・・・」  しかも注意を受けるだけでは、人間は簡単に頭に叩き込まれないので、ペナルティが与えられていた。 「今回の実験は以上となります。何か気付いた事が有ったら報告よろしくお願いします」 「「「「「はい!?」」」」」 「では、解散」 「いや〜〜動きは凄かったけど、やっぱデコボコだと厳しかったね」 「そうだね、階段以外の段差の有る場所だと何度も倒れてたもんな」 「何か自分の子どもを見てる気分になった」 「いや、まだお前子ども居ないじゃん」 「いやいや、それよりコイツ彼氏も居ないから」 「ひっ、ひっどぉ〜〜」  実験後の緊張感がすっかり抜けた他の若手研究員達はそれぞれ色んな意見を述べていた。全然関係無い話をしてる連中も中には居たが、さっき聞こえた会話で彼氏が居ないは耳が痛かった。  なぜなら俺は男だが、未だに彼女が居ないからだ。
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