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でも実際は違った。見事狂矢の聞き間違いだった。糠喜びってやつだ。次の対象は妹ではなく、俺と同じ境遇をして居た家族の妹さんの記憶を研究所で開発した弐号機に搭載するという事だった。前回は人の記憶は一切インストールされてないAIスペック型で、完全介護向けのIOPだった。でも今回は生きた人間の記憶を生前の彼女の姿に造形されたIOPの身体へと移植するとの事だった。
それにちゃんと主任にも考えが有った。ぶっちゃけてしまうと、今回は実験体みたいなもので、失敗したら記憶毎消去されるだとか、動きが生前と程遠いだとか色んな問題が浮き彫りになるとの事だった。それを俺と妹で体験をさせたく無いと言う彼女からの配慮だった。
「記憶領域はバックアップが有るから大丈夫なのでは?」
「ああ、確かにリトライは可能だ」
「だがプロトタイプの記憶媒体でないコピーされたデータはコピーであり、オリジナルのデータがそのまま移動されたと言う実証がまだ証明されていない」
「その状況下でもしオリジナルのデータユニットが壊れた場合、お前は正気で居られるか?」
そんな事俺は考えもしなかった。確かに最初に移動させたデータユニットからデータがイレースされてしまった場合、例えコピーが有りますと言われてもそれはオリジナルでは無く、複写の産物に過ぎない。
単純な話最初に持っている写真だとか本が有って、それが消失したけどコピーが有るからと渡されるのと同じ感覚だ。そう、あくまでそれはコピーされた偽物で有って、絶対にオリジナルなんだとは言えない。
俺は主任の言う通りだと話を聞き納得した。
本当の意味での妹の復活についてはオリジナルのデータがコピーでは無く、そのまま別の媒体へ移動出来る未来にかけることにした。
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