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「おう、おはようさん夏」
「おはよう狂矢」
「よいよ、この場所ともお別れやな」
「ああ、そうだな。思い起こせば此処では色々あったよな」
プロジェクトは無事終了し、俺は新しく政府の用意したマンションへと引っ越すこととなった。もう世間へ隠す必要が無くなったからだ。
工場は日本の発展の為、各地方都市へも分散して行く予定だ。メイドインジャパン復活の先駆けとなればと願う。
俺達の開発は世界に認められた。そしてIoPの技術を使用する際には、ライセンス費を必ず払う必要が生じ、そのお金は我が社へと振り込まれる。
「せやな。ああ、そうそうコレ」
「ん? なんだ」
差し出された一通のバースデーカードのような紙、開くとそれは……。
「おめでとう狂矢、本当に主任と結婚するんだな」
「ああ、お前には仲人を頼もうと思うとる」
「ああ、もちろん親友の頼みだ、喜んで引き受けるさ」
そして狂矢はもちろん、明日からは毎日主任との共同生活が始まる。
「おおきに。せや、夏の場合は今日からやったな」
「うん? ああ、冬美のことか。ああ、今日の夕方頃に家に届けて貰えるらしい」
そう、俺の場合は妹のアンドロイドが早目に届けて貰えるとのことで、正午には此処を発ち、ヘリで都内へ戻ることになっていた。
「ようやくやな」
「ああ、ようやくアイツに現実空間で会えるよ」
「ほんま良かったな~~」
涙の別れじゃないが、俺がこの為に頑張って来たことを誰よりも知っている友は、体裁など構わずに男泣きした。俺は泣かないと決めていたのに、あの日妹とこの三次元の世界から別れたことを想い出してしまい、同じように気が付けば泣いていた。
でも、その悲しさは今日で最期。
だって家に戻れば、俺は妹と再会するのだから。
当然のようにそうなると思っていた……あの言葉を聞くまでは。
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