30. Trouble

6/8
前へ
/184ページ
次へ
 刻一刻と時間が過ぎていく。もしもこれが只のツーリングの旅ならば、ゆっくりと流れる景色を眺めながら流していくのだろう。  でも、今の俺の瞳は二点を行ったり来たりしていた。一つは事故にならないように、周りをみること、そしてもう一つは、グラスに表示された到着時刻の更新情報だ。  到着時間は30分と有ったものが、1分、2分と更新していく。さすが米軍兵士は金持ちなのか、『クルーザー』は乗り心地が違う。普通にバイクであれば、後ろに足を置くかんじだが、コイツの場合はステップの位置が前方にある。  恐らくパワーもチューンが加えられているのか? 普通のバイクよりも幾分か速い気がする。柵から向こう側は日本ではないので、好き放題やっているに違いない。日本人として文句を言いたいところだが、今回はコイツのお陰で妹を救いに行けるので、目を瞑るしかない。  幾ら速いと言っても、限界があるらしく、ナビ上のタイムは3分以上は速くはならなかった。  そしてまたずっとぶっ飛ばして行けるかといえばそうではなく、信号という障害に度々阻まれることとなった。 「ちくしょー、こういう時の赤信号ってなんでこんなにも長いんだよ」  そんな時、突然スマートグラスに連絡が入った。  恐らく、湯川さんからだ。 「はい、もしもし」 「左河の担当と連絡が取れたよ」 「マジですか、ありがとうございます」 「それが……いま荷物を搬入するところらしい」 「…………」   「すまん、夏……」  声にならない彼の沈黙の意味することがインカム越しからも伝わって来た。  そんな……  ━━間に合わなかった!?  
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加