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もうこうなったら強硬手段しかない。
ドドドドドドドドド
歩道橋の信号が点滅する。
俺はスロットルに気持ちを注ぎ込むようにグリップを力強く握る。
ブオンブオングオン
バババババババババ
信号が青に変わるか変わらないかの瞬間に一気にスタートした。
「行け―――――!?」
周りから見れば20代の若者が、なにか薬をやっているかのように雄たけびを上げたように見えているかもしれない。
それでも構わない。
もう後先なんて考えていられない。俺はただただ冬美を変態の手から救うことしか頭になかった。
警察沙汰になるかもしれない。自分の未来を棒に振る行為になるかもしれない。なによりも、此処まで育ててくれた両親には本当に申し訳ない。
それでもそれよりも、俺には冬美が何よりもこの世で一番大切なんだ。
大切な人なんだっ!?
なりふり何て構っていられない。
面子がなんだ。妹の冬美のためなら、犯罪者でもなんにでもなってやる。
見えて来た、あそこを曲がれば奴の家がある。
キキ―――――――――ッ!?
滑るようにバイクをスライドさせると、後輪タイヤが浮き気味の状態で門すれすれで止まる。
荷物を運び終えたスタッフとメタボ感丸出しの脂ぎった男がアイスを握ったまま何事かと固まっている。
「あ――――――っ」
この家の主人と思える男のアイスがそのまま庭の芝生へと落ちた。
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