柚葉のおはなし

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   今日は、ちゃんとやる。  そう決めていた。  学校から帰って、数学と英語の予習と復習をしてから晩ごはんを作った。  そういえばお兄ちゃんはパスタが得意だったなと思い出す。  あと、ハンバーグも美味しかった。  今日は湯豆腐を食べたかったので鍋と豆腐と昆布とネギとポン酢を出して簡単に作った。  別に、ダイエットしているわけではないけれど、柚葉は少食のほうだ。  湯豆腐には、ポン酢が合う。  ほふほふと熱い豆腐を口に入れて柚葉は自分で作った晩ごはんに満足した。  1Kで暮らす冬のひとときを味わう。  パーカーの首筋に冷気が刺した。  ―――――  夜の8時。  ネットでアニメを観ながらお風呂を沸かした。  柚葉がアニメ好きになったのは小学校の頃クラスで一緒だったアニメ好きの男の子のせいだ。  塩崎。しおちゃん。  本格的に観るようになったのは高校生になってからだけど、やっぱりしおちゃんが熱く語っていたアニメの話をずっと覚えていたのだ。  さまざまな話をしてくれたけど、ジェシカのことを教えてくれたのはものすごく助かった。  ずっと抱えていた疑問が泡になって溶けたのだ。  中学を卒業して、まったく連絡なんかしなかったけど、夏休みのある日に「元気してる?」とLINEが来て、少し他愛もないメッセージをやりとりしながら『SAO』のことを知った。  アニメ、『ソードアート・オンライン』のことだ。 「現実が辛く、逃げたいって思うときがある。どこかまた違う自分になれたらいいなって思ってる」  そんなことを言ったら、塩崎がSAOのことを教えてくれたのだ。
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