柚葉のおはなし

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 すぐにそのアニメは観なかった。  小学校とは違って、柚葉が通っている高校では「宿題」がない。  だけど、夏休みで一個だけ提出しなければならないものがある。  それは、レポートだ。  何のレポートでもよい。  数学でも、化学でも物理でも歴史でも現代文でも、なんでもいい。  自分の興味のあるものを題材にしてレポートを書くのだ。  柚葉は「女の子」をテーマにした。  女の子。 「如何にして女の子は『女の子』になるのか」という内容だ。  染色体や脳の構造のことから、ジェンダーの話や歴史や動物の生態に至るまでの壮大なレポートを書いて、賞をもらった。  その、レポートを書いているときに仮想現実のことに触れて、SAOを思い出したのだ。  あの日、衝動的に「走り」、TSUTAYAに行き、DVDを借りて観た。  変な、感覚だった。  広島に行ったときの感覚と似ていた。  SAOを観て、  ハマった。  泣いた。  そこから、柚葉はアニメ好きになったのだ。  ―――  お風呂が湧いた。  部屋で服を脱ぎ、全裸になる。  形のよい乳房と、控えめの陰毛。長い髪。  身長150センチ弱。  ウエストは細めで、ちょっとお尻が丸みを帯びている。  太ももは標準的で、ふくらはぎも、健康的。  柚葉は、シャンプーブラシとスマホを持って浴室に向かった。  柚葉が暮らすアパートには脱衣所がない。1K。  バラにしようと決めた。  入浴剤。  乳白色のピンクの入浴剤で、バラの匂いがする。 「今日は、ちゃんとする」そう決めている。
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