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お正月。毎年、僕んちでは家族揃って初詣に行く。ただ今年は去年とちょっと違う。僕が生まれる前は瑠璃お兄ちゃんが女体化して初詣行ってたんだって。
年末にその話になったら今年の初詣は瑠璃お兄ちゃんと僕が女体化して行くことになった。張り切ったのは、お母さんだ。
「はい。翡翠の着付け完了」
「うーん。これ可愛いのかな?」
「可愛いよ」
先に着付けを終わってた瑠璃お兄ちゃんもなんか清楚に見える。普段はめっちゃ元気なのに。
「じゃあ二人とも、お父さんにお披露目しよう」
多分、お父さんはリビングで待ち疲れているはず。振り袖姿見たらちょっとは元気になるかな?
「なんて可愛いんだ! 瑠璃も翡翠も最高に可愛いよ!」
大声で叫んでバチバチと手を叩くお父さんだが、そのお父さんの前にある紙が気になる。何か描いてたの?
「親父……それ何?」
やっぱり瑠璃お兄ちゃんも気になったらしくて素直に聞いてた。瑠璃お兄ちゃんってお父さんにもお母さんにも気になったこと、なんでも聞いちゃうんだよな。ちょっと尊敬する。
「ん? これか? これのことか? 実はお父さん、今年絵本作家デビューしようと思ってラフ画を描いていたのだよ! 見てくれ!」
お父さんは紙をテーブルにバーンと立てて叫んだ。
「ぷにぷに戦隊ひっぷー!! レッドひっぷー瑠璃とブルーひっぷー翡翠の物語!」
何それ? 僕は思っただけだが、瑠璃お兄ちゃんの行動は早い。
「はいはい。しまおうね。多分さ、今年描いても時代が追いつかないから今年はやめようね? いつか時代が親父に追いつくからさ」
「そ、そうか? 瑠璃がそう言うなら……」
お父さんは、いそいそとぷにぷに戦隊ひっぷーをアトリエにしまいにいった。その間に瑠璃お兄ちゃんが僕に耳打ちをする。
「お兄ちゃんが責任持って、あれをこの世から消し去るから安心しろ……」
瑠璃お兄ちゃんの言葉で分かってしまった。ぷにぷに戦隊ひっぷーは安心して世の中に出していいものじゃないのを。こういう積み重ねで大人になっていくのかな?
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