42話 魚?天国

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フィッジュボン「兄者(あにじゃ)――っ!! 遠くて聞こえませぬ!」  シイと美里(みり)が交戦している方は、フィッシュボンという名のようだ。兄の半魚人が、全体的に赤や黄色という暖色系の色合いから熱帯魚のようであるのに対し、弟のフィッシュボンは青や紫という深海魚のような寒色系の色合いをしている。  フィッシュボンは肩まで伸びた巻き毛が淡藤色(あわふじいろ)で、耳はない。代わりに耳のある場所に白縹(しろはなだ)の鰓がある。フィッシュボンは両目の下に三つずつ壺菫(つぼすみれ)の鱗がついている。  上半身は筋骨隆々な人間の身体で、肩に紺青色(こんじょういろ)の鰭がついていた。魚の下半身は、空色鼠(そらいろねず)から紺青色(こんじょういろ)へと濃いグラデーションがかり、日光を受けると虹色に反射しているようにも見える。  半魚人は、”平和の湖”の水上を走り、フィッシュボンの元へ近づく。その様がまた奇妙さを引き立たせている。 半魚人「あの長いおさげ頭の女、わしの嫁にする! 連れて行く」 フィッシュボン「何故(なにゆえ)、どこの馬の骨ともわからぬメスを連れて行くのか!」  半分魚の兄弟は、耳が遠いのか近くにいても大声で話し合っている。そのため、会話の内容がリング達に筒抜けだ。 リング「メスって、アンタね……」  リングが呆れていると、すかさずウラのツッコミが入る。 ウラ「アンタ達、兄弟な訳?! 似てなさすでしょ! 魔獣と人間のハーフなのかよくわからないけど、上下で分かれ方が違い過ぎ!」  ウラの言う通り、兄は半魚人で弟は人魚のような風貌で色合いも対照的で全く似ていない。 半魚人「我々はれっきとした兄弟じゃ! それに、ハーフなどではない! 我々は正真正銘の水中型魔獣族じゃ! どっからどう見ても瓜二つじゃろうが!!」  半魚人がウラの発言にややキレ気味に反抗する。 シイ「どこが瓜二つなんだよ……」 美里(みり)「私とあずきも似てないけど、もっと似てない兄弟だと思うけどなぁ……」  思わずシイと美里までツッコみだした。癖のある魚兄弟が離れ、兄の半魚人が急にリングの方へ向かって走り出す。
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