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「皹……? ここから出られる……?」
闇にかき消されたせいではっきり聞こえなかったが、どこかで聞いたことのあるような懐かしい声がした。
「誰?! 誰かいるの? わたしはリング。返事をして」
「リン……グ……?」
懐かしい声は確かにリングの名前を呼んだ。
*****
「リングさん!」
聞き覚えのある声がした。リングの眼前には、黒梅色の大きな目に涙をたっぷりと浮かべたレイン王女の姿がある。リングは横になっているのか、レイン王女に顔を覗き込まれているようだ。王女の目からは今にも涙が零れ落ちそうである。
「リングさん……。良かったです。私を取り戻そうと、囮になったあなたのお姿……勇敢でした」
レイン王女の近くには、ウラ・シイ・サジノスケ・美里の姿もあった。レイン王女と、仲間達の姿を見てどっと安心感が溢れてくる。リングは勢いよく起き上がり、近くにいたレイン王女を強く抱きしめた。
リング「皆! 会いたかった! わたし、ずっと一人で真っ暗な所にいたから……」
レイン「リングさん……だいぶ魘されていました」
リングは咄嗟にレイン王女を抱きしめていたことに気がつき、彼女から離れる。しかし、王女はリングを心配そうに見つめているだけだ。
ウラ「真っ暗な所って……”平和の花畑”に行った時もそんな夢を見たって言っていたわね」
リング「うん。前は自分なのか誰かなのかよくわからない感じだったけど、今回は誰かがいたような……って今何時?」
周囲を見ると、木々の間から見える空が朝焼けの紅い色を帯びていることに気がつく。皆によると、リングはライの紫電が身体に直撃し、しばらく眠っていたという。サジノスケとウラがリングに回復魔法を使用してくれたお蔭で今は完全に回復とはいかないが、身体は十分に動かすことができた。
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