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ウラ「あたしとサジノスケがアンタに回復魔法を使って、比較的短い時間で空が明るくなってきたみたいなの」
ウラとサジノスケは、一日に一度しか使用できない回復魔法をリングの為に使用した。その時既に日付が超えていたため、今日分の回復はできないという。
”ファイト”の開催が始まって12日目が経過した。30キロメートルの距離移動というアドバンテージをかけて、参加者達はその条件であるレイン王女の護衛の為に必死に王女を探していることであろう。
これからますます戦闘は熾烈なものとなって行くことが予測される。そんな中、ウラとサジノスケが回復できないのは痛手だ。
リング「そっか。その時には日付が変わっていたんだね。二人共ありがとう。わたし、二人の分も頑張るね。今日も皆、ファイトだよ!」
サジノスケ「なんてことないぜ! それより、リングちゃんが生きていてよかったよ」
シイ「……ぐぅ」
ウラ「……」
珍しくツッコミ担当のウラが寝坊助のシイを起こさない。まだ寝起きの為か、ウラも眠たいらしい。
美里「恐らくあと数時間までには、レイン王女を虹の出る所にお連れしないと。皆、まだ夜明けで眠たいと思うけど、先へ進もう」
美里の提案で先へ進むことにした。歩けば歩くほど、霧の森の中は初夏の爽やかな朝日が差し込んで行く。そうして、ぐんぐんと日が昇って行く。今のところは晴れているようだ。
前日の土砂降りの影響か、地面はまだ柔らかくぬかるんでいる。慎重に歩かなければ、泥と乱雑に生えている雑草に足を取られてしまう。皆、思う様に前に進むことができず、もどかしさを感じていた。
リング達が苦戦して歩く中、ウサギの姿に変身しているレイン王女が罰が悪そうに話し出す。
レイン「あの……。大変申し上げにくいのですが……」
王女が言うには、今は晴れているが14時の任務終了時までに確実に雨が降り出すという。任務の達成条件は虹の現れる所に王女を連れて行くことだ。
虹は雨の後、空中に残った水分が水滴となって太陽光を分散させることによって生じる。七色に見えるのは、光の屈折率がそれぞれの色で異なる為である。つまり、虹は雨が発生した後でないと起こらない。
ただでさえ今は足元が悪い状況であるが、今後再び雨が降るとより足元の状況が悪くなることを、レイン王女は懸念していた。
サジノスケ「また雨かよ~。でも、これから降るのを知ることができただけでいいじゃねぇか」
美里「そうだね。雨が降らない今のうちに距離を稼ごう」
リング「虹ってどこに出るんだろうね」
レイン王女「虹が出る条件は十分わかりますが、出現する場所だけは予測できません」
虹の出現場所は誰にもわからない。あれこれ考えても分からないことは分からないため、ひとまず北にあるゴール、”旧キング・クイーン城”を目指すことにした。
30分程経った頃、海のある東の方角から真っ暗な雨雲がこちらに向かって来ていた。ぽつりぽつりとリング達の頭に雨粒が落ち始める。
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