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分厚い雨雲が青空を覆い尽くし、雨足が段々と強まって行く。ゴロゴロと唸りながら雷雲も立ち込めてきた。雷が苦手なレイン王女は、ウサギに変化し、サジノスケのマフラーの中で身を強張らせる。
レイン「何だか凄い勢いで雷雲が近づいてきています。おかしいですね」
サジノスケ「まさか、またあの雷使いのヤンキー女か?」
美里「だとしたら、レイン王女がウサギに変身できることを知っているから、急がないと」
前日、リング達と戦闘したライによる不自然な雨雲なのかわからない。一行は、ライの高い攻撃力のある雷攻撃に苦戦を強いられた。なるべくなら、彼女との再戦は避けたい。
ピカッ
突然、空に白い閃光が走る。雨空を見上げると稲妻が雷雲の中を走行し、一筋の光となって地上に落ちて来る。
ドーン
落雷はリング達とは離れた場所に落ちた。レイン王女は恐怖で震えている。雨がリング達を容赦なく濡らす。五人はレインコートに身を包む。
(今のは自然の雷かな? ライさんの雷攻撃はもっと強かったし……)
などとリングが考えていると、サジノスケが大きな声を出す。
サジノスケ「皆、止まれ!」
この中で一番聴覚と嗅覚が優れている彼が止まれと言う時は、敵の出現した時だ。全員、近くの木陰へと身を隠す。
リング「もしかして敵を見つけた?」
サジノスケ「北西だ」
サジノスケが北西だと言ったのに、他の四人は北東を見る。レイン王女はなぜ別の方向を見るのか訳が分からない。
レイン「皆さん、何故北東を見るのですか?」
ウラ「あぁ、サジノスケはアホだから、よく東と西を間違えるんですよ」
サジノスケ「何だとっ?! 俺は北西から何か聞こえるって言ったんだぞ……?」
リング「じゃあ、聞こえる方向を指さしてよ」
サジノスケは恥ずかしそうに、リング達が見ている方向を指さす。
ウラ「ほら、間違ってるじゃない」
シイ「おい、どんな音が聞こえるんだ?」
サジノスケ「……何か太鼓みたいな感じの」
ウラとリングにからかわれて腹が立つのを抑えて、サジノスケはシイの質問に答える。太鼓と聞いて、一瞬ウラの表情が曇る。
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