断罪処刑

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断罪処刑

「なあ……(あずさ)」 「うん」 蝉がミンミン鳴いている。 炎天下の中自転車を漕いだせいで、汗が額から零れ落ちてきた。 僕はTシャツの袖で汗を拭き、遠くに見える蜃気楼のような少女を見つめる。 彼女の体はぼやけていて、顔がはっきりと見えない。 でも彼女は手を振っていた。 僕たちに向かって。 「お前、あの子知ってる?」 「知らないと思う。よく見えないけど」 「そっか……どうする?」 女の子はまだ僕たちに手を振っている。 ぶんぶんと体を動かしながら…… すごく楽しそうだ、僕たちは顔を見合わせてペダルに足を置く。 キコキコと使い込んで錆びついている自転車を漕いだ。 頭がなんだかぼうっとしてくる。 汗が衣服を濡らしている。 夏の暑さに僕たちはすでに参っているが、憑りつかれたように彼女を追った。 彼女はクスクスと笑った。 ここからあの子の顔なんて分かるはずないのに、僕は彼女が笑っていると確信できた。 女の子は背を向けて駆け出していく。 蝉の声が激しくなってきた。 太陽だってピカピカと輝いている。 僕は自転車のカゴに入ったスポーツドリンクの蓋を開けて口につける。 ゴクゴクと飲む。 それでも喉はカラカラだ。 息も乱れ、心臓も痛い。 それでも僕は……どうしても立ち止まりたくなかった。 あの子の顔を近くで見てみたかったのだ。 「はぁはぁ……梓」 「……なに?」 「あの子……足速くね?全然追いつけないよ」 「ああ……そうだね」 「ってかさ…あんな子この村にいたっけ?」 「分からない、どこか別の場所から来た子かも」 「そうか……」 僕たちの会話はそれで終わった。 もう声を出すのも辛いのだ。 脚の筋肉が痛む。 僕たちは必死でペダルを踏み続けた。 でもあの子には近づけない、ずっと一定の距離を離されている。 近くも遠くもならない……視界に映る彼女はいつまでも体の大きさが変わらない。 健太郎が足を止めた。 思わず僕も地面に足を付けてしまう。 「ふぅふぅ……どうしたの?」 「もう無理だよ俺……疲れたよ」 「もうちょっと頑張ろうよ……あの子と話したいんだ」 「おえっ……お腹痛いよ。俺もう無理」 「だらしないこと言わないでよ。ほら行くよ」 「だから無理だって!もう帰ろう!」 僕は異様に腹が立った。 健太郎は泣きそうになって俯いている。 「僕は行くよ。帰りたいなら1人で帰って」 「お、おい」 僕はここまで一緒にきた健太郎を置いて、また彼女を追った。 彼女はこちらに振り向き、時折手を振ってくれる。 僕は夢中だった。 あの子の手を握ってみたい。
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