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でんじゃらす奥さんろくたび
デスクの清掃を終えて俺は息を吐く。今日で仕事納め。結婚してからというもの稼ぐためにほぼ毎日残業している。年末年始くらい妻のミユキとゆっくり過ごしたいし、今日くらいは早く帰りたい。
「じゃ、お先に失礼します!」
「あ! ミツグ先輩、一杯どうすか?」
可愛い後輩に誘われたが今日は駄目だ。
「ごめんな。今日くらいは早く帰りたいんだ。じゃあな」
颯爽と職場を立ち去る。後ろから、後輩女子のミツグ先輩はミユキさん一筋なんだからと言う声が聞こえる。
後輩男子も後輩女子もミユキの可愛さにやられているからな。一番ぞっこんなのは間違いなく俺だけどな!
寒風吹きすさぶ街も颯爽と歩き真っ直ぐに愛妻の我が家にたどり着く。
「ミユキ、ただいまーー」
台所に立っていたミユキに抱きつこうとするが、振り返ったミユキがキッと俺を睨む。
「貴様! なぜ早く帰ってきた!?」
あれ? 喜んでくれると思ったのに……。
「なんか駄目だった?」
「駄目ではないが周りをよく見ろ!」
言われて台所のテーブルを見ると間違いなくご馳走の類が狭しと並んでいる。
「全く貴様は本当に空気が読めないな」
顔を真っ赤にして、またまな板に向かうミユキの顔は真っ赤だった。
もしかして、俺が仕事納めだからご馳走作ってた? まだ年越しじゃないのに。
「もう! 可愛いんだからぁ」
ミユキを後ろから抱きしめるとミユキのアッパーが飛んできた。
「盛った犬か!!」
だがミユキのパンチは赤子のパンチより威力がないためダメージはない。逆に癒やされるくらいだ。
「そんな元気があるなら手伝え。例え貴様の贅肉になるだけだとしてもだ」
「はぁい。もちろんもちろん。俺はミユキのものだからねぇ」
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