アタシの使い魔(ドS)

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「フゥー………」 アタシは、自分の部屋の自分の勉強机の上に長いため息と共に突っ伏した。 ため息の訳は、色んな思いと色んな考えで頭の中がぐちゃぐちゃになっているからだ。 学校での陰湿なイジメと嫌がらせ。 そして、母親からのご先祖様のことについての長々とした話というかお説教。 そしてご先祖様が持っていたと言われる特殊な能力。 確かに母はその能力の片鱗を見せる時があった。 そんな、学校でのイジメと家に帰ってからの母親の話。 頭の中はもうごちゃごちゃだ。 あ、自己紹介するね。 アタシは…安倍野 晴…。 (アベノ ハル) 年齢は17歳の女子高生。 いわゆるJKってやつ。 身長は中学で成長が止まってしまったのか、150センチのスレンダーボディ。 いわゆるやせっぽち。 顔は………普通じゃないかな? 一応お眼目はパッチリしてるつもり。 部活はやってなくて、ちょっとオタク系の健康で地味目な女の子……だと思う。 ちなみに母親曰く、アタシのご先祖様は平安時代に当時の朝廷の裏で暗躍していたと史実にも残るような…陰陽師。    『安倍 晴明』 と書いて、アベノセイメイと読む。 どういう家系の脈なのかは、流石に年月が経ちすぎて不明らしいんだけど、一応直系らしい。 と言うわけで、事あるごとに母親から口酸っぱく耳タコが出来るほど、幼い頃から同じことを聞かされてきた。 けど、今の時代に陰陽師の子孫とか言われても……。 特になんの能力も発現したこともないし。 目下のアタシの悩みは、学校での陰湿なイジメへの対処だ。 靴の中に入れられる画鋲やカッターナイフの刃とか、教科書やノートに書かれる落書きとか悪口とか……。 多種多様な陰湿なイジメの数々。 ま、そこらへんはまた今度説明するね。 今の時刻は深夜。 アタシは自分の部屋の机の前で、現状を打破するためのことを思い巡らせていたわけです。 「フゥー……、こんな時に素敵なナイト様が颯爽と助けにきてくんないかなー………」 (んー、髪の毛は燃えるような真紅で、背は180以上で……魔法が使えて……身体能力が凄くて……当然イケメンで……スラリとした細マッチョでぇ…) 元々、妄想癖があるアタシの妄想は止まらない。 (式神かー……) 母の話の中に出てくる…式神。 虫や動物の形に紙を切り取りそれに魂を吹き込んだり憑依させて、使い魔にすること。 そんな嘘か誠かわからない話を小さい時から聞かされたアタシ。 現状打破のため、何かに縋りたくて母に教えられた通り、材料を用意して机の上に置いては………ある。 そして我が家の家紋と云われる黒揚羽蝶。 まずは初歩からと思い、アタシは黒い画用紙を大きめの蝶々の形にカットしている最中だった。 (でも、もうこんな時間……さすがに眠いなぁ) 睡魔には勝てず、机の上に突っ伏したまま、アタシはウトウトしてたらしい。 (ハッ!……ダメダメ、一応最後までやんなきゃ…ズルッ) アタシは居眠りの代償でカット中の画用紙に涎を垂らしていた。 しかも、暖房が強かったのだろう汗もかいていて、その汗が画用紙に……。 (もう、やんなっちゃう……でも半分以上できてるからなー) 捨てるのも勿体無いと思い、そのままカットを続けることに。 (想いを込めなさいってママは言ってたよな……) 陰湿なイジメのこととか、騎士様のことを想いながら画用紙を切っていく。 そうして切っていく途中で悔しくなり、悲しくなったりとかで、自分でも気付かないうちに涙をボロリと溢していた。 視界が涙で滲んで、思わず手元が狂う。 「イタッ……!」 ほんの少しだけど、ペーパーカッターの刃がアタシの指を薄く切る。 そして汗と涙で滲んだ画用紙にその血も………。 「…さってと……こ…れ…で……完成……っと」 自分では下手くそだなーと思いながらも、なんとか蝶に見えるような式神の元が完成した。 (あとはこの式神に六芒星を書き込むだけね) ヨダレと汗と涙とそしてアタシの血が滲むアゲハチョウ。 この四つの要因のことはこの後、ずっと先に判明することになるけど。 (想いを込めて………っと) 「あ、名前も付けてあげなきゃね♪」 独り言を呟きながら、母に教えてもらったご先祖様の神言を唱える。 「アタシを守ってくれる素敵な強い騎士様。 グエン ガードナーよ。 いざここに召喚、そしてその魂を具現せよ」 そう祈りを込めアタシは六芒星の最後の一辺を書き上げた。 (ほーら、なーんにも起こらないじゃない) …………と、そう思った瞬間だった。 アタシが切り取った画用紙の黒揚羽が突然光りだしたのだ。 「ま、眩しっ⁉️」 眼を開けてられないほどの眩しい光りで輝く黒揚羽。 それはピッカーッて効果音が聞こえるほどであった。 そしてゆっくりとその光は収まっていく。 あまりの眩しさに眼を瞑っていたアタシは、両目にかざしていた手の平をゆっくりと離した。 すると、そこには1人の男性………いや、真紅の髪をもつ騎士様が立っていたのであった。
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