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そして、場面と時間とその上次元さえも超越したここは、異世界のトルルード王国。
そして、その王国の領地内の貴族街の一角に、一際大きく豪華な屋敷があった。
その屋敷は、王城のすぐ近くにあり、その屋敷の玄関を開ける傍若無人な1人の少女の姿があった。
なぜ、傍若無人かというとその少女は使用人たちの制止の声を振り切って、ズカズカと屋敷の中を入っていったからだ。
使用人達は声は掛けるものの、実力行使に出るものは誰もいなかった。
どうやら高貴な人物らしいその少女は、やがてとある部屋の扉の前で立ち止まる。
「コーラー‼️
起きなさーい‼️
まーた夜更かしでもして寝坊してんでしょー‼️‼️」
そんな大声を張り上げた少女は、部屋の扉に手をかけた。
そしてノックもせずにドアを開け、部屋の中へと入って行く。
ズカズカと部屋の中に入った少女は、その部屋の奥にあるベッドの前で立ち止まった。
「起ーきーろーー‼️‼️」
そう大声を上げながら膨らんだ布団を捲る。
中から現れたのは深紅とも言える髪を持つ1人の少年の丸くなった姿であった。
「サミーよー、寝ミーよーzzzz」
俺は枕に抱き付きながら、捲られた布団を探して空に手を伸ばした。
「だからーー、起きなさいって言ってるでしょ‼️
今日はあなたの記念すべき初登城の朝なのよ‼️」
「………ハツトジョウ……?…」
「そうよっ!
あなたが騎士になるための初登城よっ!」
「おおーっ!?」
寝ぼけていた脳みそは少女の一声で、一瞬にして覚醒した。
俺はバタバタとベッドから飛び起きる。
「今何時だっ?
つーか、起こしに来るならもっと早く起こしに来いよ!」
「ハァー!?
アンタが来ないから来たんでしょうが!
てゅぅか、なんで裸なのよ?」
一応、下着だけは身につけていたが、上半身は裸の俺はベッドから降り立った。
慌てたように後ろを向く少女は、俺の幼馴染であり王城に住む "ハレルティナ" という名の同級生だった王女だ。
そして、そう言う俺は "グレン ガーディナー" 18歳。
ついこないだ騎士になるための養成学校を卒業したばかりの、ガーディナー家の長男。
そのガーディナー家は、代々王家の護衛を務める由緒正しき侯爵家。
簡単に自己紹介すると、燃えるような深紅の髪を持ち、背は高く筋肉質なスタイルのいいイケメン。
ま、自称だけどな。
けど、養成学校前の学園に通ってた時代はモテていたからイケメンって言えるだろ。
だけど、俺は女には興味はなく、将来騎士になるために剣と魔法の修行に明け暮れていた。
そして、今日はその騎士になるための第一歩とも言える初登城。
養成学校を出たからと言って、すぐに騎士になれるわけがなく、まずは城で見習いとして勤めることになっていた。
「着替えるから外に出てろよな!」
「言われなくても!」
バタンと乱暴な音を立て、部屋を出て行くハル。
あ、ハレルティナだから略してハル。
小さい頃から、いつの間にかそう呼んでいた。
薄い皮のインナーを着込み、その上から光り輝くシルバーの甲冑を身につけた俺はハルに声を掛けた。
「おう、もう入って来ていいぞ」
ギィバタンとまた乱暴な音を立てて、ズカズカと入って来るハル。
「ふ〜ん、馬子にも衣装って言葉通りね」
憎まれ口を叩くハルに、気にせず俺は剣を抜く。
「言ってろ。
今に見てろよ、2、3年で立派な騎士になってやるから」
構えていた剣を腰に差し、俺はハルを睨み付けた。
その時である、俺の身体に異変が起こったのは……。
ピカーーッ‼️⁉️
「ま、眩しっ⁉️」
「な、なんだっ⁉️」
「ぐ、グレンッ‼️
身体が光ってるわっ⁉️」
「なっ、一体何が⁉️」
魔法を発動もしていないのに、突然眩しい程に光り出した俺の身体。
「光ってるだけじゃないわ。グレンの身体が透明になってってる⁉️」
「なにっ⁉️」
そして、俺の身体はその一言を最後に完全に透明になり光と共に消えていったのであった。
「ぐ、グレン………」
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