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「てか、椋。自分の苗字呼ぶの嫌じゃない?俺のことも名前で呼べば?」
鈴木 藤嘉がそう言った。
まぁ、確かに。俺は言った。
「そうだな。『藤くん』って呼ばれてるんだっけ?」
「それは止めて。何か、女子が勝手に呼んでるだけだから」
鈴木 藤嘉は少し困った様にそう答える。
「んじゃあ、藤嘉?」
「あぁ、うん。その方が良くない?お互い鈴木同士なわけだし」
「まぁ、確かにそうだな」
そう言えば、藤嘉は満足そうに笑う。
高2にもなって互いの呼び方を決めるとか、何だかむず痒い気分だった。
藤嘉はノートを鞄にしまいながら、俺に問う。
「図書室って、文芸部じゃなくても使用は自由なの?」
「勿論。まぁ、基本は俺と顧問の高瀬以外は誰も来ないけどな」
そう答えると、藤嘉は「ふぅん」と呟いた。
そして不意に、貸し出しカウンターの1番近くの机から椅子だけを持って来た。
貸し出しカウンターの内側にいる俺とカウンターを挟んで向かい合う様にして、外側に椅子を置くと何の迷いもなくそこへ腰を下ろした。
椅子に座った藤嘉と、貸し出しカウンターを挟んで同じ目線になる。
藤嘉は貸し出しカウンターに頬杖をついてこちらを見ながら口を開く。
「いいね、ここ。静かで、落ち着く」
距離が近いな、と思いながら俺は言った。
「だろ?穴場だよ」
「文芸部って毎日何してんの?」
「文芸部の活動なんかしてないよ」「え?」
「文芸部なんて名ばかり。図書室の番兵しながら、勉強したりスマホいじったり自由にしてる」
「へぇ、」と呟いてから、藤嘉は続ける。
「文芸部じゃなくても使用可ってことなら、俺も図書室使ってもいいわけ?」
今まで図書室に来た生徒などいたことがなかったから、俺は少し考えてから答える。
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