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「うん、まぁ、使っていいわけ」
藤嘉はすぐに口を開く。
「じゃあ、明日も来ていい?」
明日も?何しに?
と思ったけれど、ここが図書室である以上は断る理由は俺には無かった。
「う、ん。いいよ」
俺の答えに、藤嘉は微笑んでから、頬杖を外して椅子の背もたれに身体を預けて言った。
「ただ来るのもなんだから、本でも借りて帰ろうかな」
「え?」
思わぬ発言に、短い声を上げてしまった。
それに反応して、藤嘉は言う。
「図書室だろ?本、借りれるよね?」
「まぁ。借りれるけど…今まで借りた奴なんかいないぞ」
「マジかよ」
「少なくとも俺がこの貸し出しカウンターに座り始めてからは1人もいない」
藤嘉は立ち上がりながら言った。
「じゃあ、俺が椋の初めての男だな」
藤嘉の言葉がゆっくり意味を成して俺の頭に入ってくる。
俺にとって、意味深な台詞に心拍数が跳ね上がる。
…さらっと何てことを言ってんだ!?
そんなの、そんなこと、女子だけじゃなくて俺みたいな男子にだって勘違いされるぞ!?
そんな俺の気など知らずに、藤嘉は本棚へと向かって行った。
貸し出しカウンターから1番近い本棚に向かい、並べられた本の背表紙をさっと眺めてから一冊手に取って戻ってきた。
「早っ」
俺の呟きなど気にも止めず、藤嘉は持ってきた本を貸し出しカウンターに置く。
「これにする」
それは去年芥川賞をとった作家の小説で、俺も春休み中に読んだ本だった。
俺は言った。
「これね、面白かったよ」
「読んだことがあるの?」
「うん。スラスラ読めたよ」
「へぇ、楽しみ」
そんなやり取りをしながら、カウンターの引き出しから貸し出しカードを出した。
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