7・答えに辿り着かない

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「あれ?椋ちゃん、おかえり」 「ただいま」 帰宅したら妹がリビングでゲームをしていた。 俺を見て、言う。 「帰ってくるの早いね」 「うん、まぁな。母さんは?」 「買い物行ってる」 「そうか」 「椋ちゃん」 「ん?」 「高校生ってこんなに帰り早いの?せっかくの放課後だよ?デートとかしないの?」 「…ノーコメント」 妹にそう答え、手洗いうがいをしてから2階の自室へ引っ込んだ。 なんだか勉強するのに気が乗らず、かと言って書庫の整理なんかも全然やりたくなくて、図書室から早々に帰って来てしまった。 いつも通り、部屋着に着替えて、鞄から参考書を出して、机の前に座って。 そこまで一気に動いて、溜め息。 『1組の鈴木なら知ってます』とは? 図書室を出てから今に至るまで色々考えてはみたけれど、昨日より前の藤嘉との接点が思い当たらない。 俺が藤嘉のことを知っていたのは、藤嘉が転校生で目立っていたからだけれど 俺は全く平凡で目立ったりしない生徒な訳で、藤嘉に知られている理由がない。     クラスも違うし昨日まで話したこともなかったはずだ。 いや、絶対話したこともなかった。記憶にない。 じゃあ、何で『知ってる』なんて? 皐月くんの聞き間違い? 明日、藤嘉本人に聞いてみようかな? 『何で俺のこと知ってたの?』って? …いや、いきなりそんなこと聞かれたら流石に気持ち悪くないか? 変なことを言って、変に警戒されたら困るのは俺だ。 普通に、普通の距離感でいなくては。 それは止めよう。 頭の中でそう結論づけて、俺は参考書を開いた。
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