7・答えに辿り着かない

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さっき藤嘉に間違いを指摘された問題から、続きやろう。 「えっと、確か-3とか言ってたっけ?」 自分で書いた数式を消しゴムで消して、最初から解き直していく。 数式を書き並べながらも、頭では別のことを考えている自分がいる。 藤嘉の奴、参考書をチラ見しただけで答え言ったよな? 頭の中で暗算したってこと? だとしたらめちゃくちゃ頭良くないか? なんて思いながら数式を書く。 解き直していくと、藤嘉が言った-3とは違う数字に辿り着いてしまった。 そもそも、本当に答えは-3なのか? 若干疑わしく思い始めた俺は解答を見てみようと鞄の中を見たが、解答冊子は入っていなかった。 紛失。多分、図書室で鞄をひっくり返した時に落としたんだろう。 「何だよ。もう」 結局、何度解き直しても俺の答えは-3にはならなかった。 答えに辿り着かない。 これが奏相手の話なら、電話でもしてサクッと答えを教えてもらえるんだけど。 藤嘉相手だとそうはいかない。 なにせ昨日知り合ったばかりだ、連絡先はおろか、知っていることより知らないことの方が多すぎるくらい多い。 皐月くん曰く、藤嘉は俺のことを知っていたらしいけれど………。 「やーめたっ」 独り言と一緒に、参考書を閉じた。 参考書に向かってはいるけれど、全然集中出来ていないのは分かっている。 だから、やめた。 仕方ないから、明日藤嘉に聞こう。 同級生に勉強の分からない所を聞くなら、別に普通のことだろう。 奏だってよく俺に聞いてくるし。 普通、普通。友達の範囲内。 まぁ、藤嘉が明日も本当に図書室に来れば、の話だけれど。
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