29人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
「てか、奏って本気でマネージャーのこと好きだったの?」
奏はまた力なく頷いた。
「そうみたい」
「みたいって、」
「昨日の部活帰りにさー…」
奏は小さな声で、ポツリポツリと話し出す。
「帰り道一緒になって。ラッキーとか思ったんだけど、転校生に告白するつもりなんだって言われちゃってさ。俺、めちゃくちゃショックで。今まで可愛いな、タイプだなって思ってただけだったけど…」
奏は一旦言葉を切って、相づちを打ちながら話を聞く俺を見た。
ほんのりと頬が朱いのは、気のせいではないだろう。
奏が改めて口を開く。
「本気で好きだったことに気付かされたって感じ…」
そう言って、はぁー…っと、深い深い溜め息をつく。
俺はどうしたものかと思いながら、しょぼくれた奏のつむじを見る。
恋愛経験が皆無と言ってもいい俺に、今の奏に掛ける言葉なんて分かるはずもない。
「どうしよ…」
黙っていようと思ったら、奏がそう呟いた。
さすがにシカトは悪いから、俺は少し迷ってから口を開いた。
「先に告白したら?」
「俺が?」
「そう。先手必勝って言うじゃん」
「先に手を打っても勝てる気がしない」
「まぁ、マネージャーさんが振られるって場合もあるじゃん」
「振られるのは、可哀想だし」
「はあ?」
思い掛けない言葉に俺が少し声を張ったからだろう、奏が顔を上げた。
「俺も最初は振られたらいいって思った。けどそしたら傷付くわけじゃん?それはそれで可哀想だなって…」
「じゃ、上手くいって欲しいのか?」
「2人が付き合ったら付き合ったで俺が哀しい…」
「どっちも地獄じゃん」
「だから昨日から辛い」
奏はそう言ってまた項垂れた。
最初のコメントを投稿しよう!