9・噂

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「てか、奏って本気でマネージャーのこと好きだったの?」 奏はまた力なく頷いた。 「そうみたい」 「みたいって、」 「昨日の部活帰りにさー…」 奏は小さな声で、ポツリポツリと話し出す。 「帰り道一緒になって。ラッキーとか思ったんだけど、転校生に告白するつもりなんだって言われちゃってさ。俺、めちゃくちゃショックで。今まで可愛いな、タイプだなって思ってただけだったけど…」 奏は一旦言葉を切って、相づちを打ちながら話を聞く俺を見た。 ほんのりと頬が朱いのは、気のせいではないだろう。 奏が改めて口を開く。 「本気で好きだったことに気付かされたって感じ…」 そう言って、はぁー…っと、深い深い溜め息をつく。 俺はどうしたものかと思いながら、しょぼくれた奏のつむじを見る。 恋愛経験が皆無と言ってもいい俺に、今の奏に掛ける言葉なんて分かるはずもない。 「どうしよ…」 黙っていようと思ったら、奏がそう呟いた。 さすがにシカトは悪いから、俺は少し迷ってから口を開いた。 「先に告白したら?」 「俺が?」 「そう。先手必勝って言うじゃん」 「先に手を打っても勝てる気がしない」 「まぁ、マネージャーさんが振られるって場合もあるじゃん」 「振られるのは、可哀想だし」 「はあ?」 思い掛けない言葉に俺が少し声を張ったからだろう、奏が顔を上げた。 「俺も最初は振られたらいいって思った。けどそしたら傷付くわけじゃん?それはそれで可哀想だなって…」 「じゃ、上手くいって欲しいのか?」 「2人が付き合ったら付き合ったで俺が哀しい…」 「どっちも地獄じゃん」 「だから昨日から辛い」 奏はそう言ってまた項垂れた。
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