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「椋杜ぉ、俺部活行くわ」
「おう、頑張って」
「椋杜は?真っ直ぐ図書室?」
「うん、書庫の整理しろって」
「図書室なんて誰も来ないのに?」
「ホントそれな」
「まぁ、頑張れよ」
「おう」
放課後。
部活に行く奏とそんな会話して、教室で別れた。
バレー部の奏は体育館へ。
文芸部の俺は、体育館とは反対の校舎へと足を向ける。
足を向けたのは校舎1階の北側にある、図書室だ。
体育館とか音楽室とか、人気がある部活に使われる教室は校舎の南側に集中しているから、北側へ進めば進むほど人気は少なくなっていく。
文芸部に所属して2年になる。
入学してすぐに兄貴の友人でもある、文芸部顧問の教師・高瀬 皐月に『幽霊部員で良いから名前だけ入部してくれと』頼まれた。
特にやりたい部活もなかった俺は、言われるままに名前だけ貸すつもりで入部した。
ところが、だ。
紆余曲折あって、俺は高瀬から文芸部の活動場所である図書室の管理を任される羽目になっている。
昔は沢山部員がいてきちんと創作活動とかしていたらしい。
が、今の部員は俺と、完全なる幽霊部員の名前すら知らない3年の先輩の2人だけ。
兄貴経由の知り合いで固められた閉鎖的な部活だが、図書室を自由に使えることは気に入っている。
家だと妹と弟がうるさくて、勉強出来ないし。
高校の図書室なんかには、マジで誰も来ない。
放課後、図書室で気楽に自由を満喫している。
図書室の前で足を止める。
ポケットから出した鍵で扉を解錠して中へと入る。
図書室の中は、いつも通り静かだ。
自分の足音しか聞こえない。
それが心地良かった。
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