12・図書室での過ごし方

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1度藤嘉が返信すれば、2度目の着信が音弥からあることは稀だ。 藤嘉は音弥からの着信をいつも『定期連絡』でひとくくりにして、あまり多くは語らない。 指切りをした手前、俺からもあまり突っ込めずにいる。 突っ込んだところで、多分、はぐらかされて終わりだろうけれど。 彼氏がいる生活ー…毎日のやりとりを単純に凄いな、と思ったのは最初の頃だけだった。 藤嘉と2人の時間に慣れた今は、何て言うかー…落ち着かない。 毎日4時近くになったら、時計を確認してしまう。 音弥からの着信がある時間帯かと思うと、落ち着かなくなる自分がいる。 何故だろう、音弥のメッセージを受けた藤嘉の笑顔を見ると腹の奥がきゅっとする。 電波の向こうから音弥はどんなメッセージを藤嘉へ飛ばすのだろう。 そして藤嘉は、どんな返事を音弥に綴っているのだろう。 毎日のやり取りでも、話題は枯渇しないものなのか。 毎日4時前後に訪れる、藤嘉と音弥2人だけの世界。 それを蚊帳の外で見ている、俺。 音弥からのメッセージ受けて藤嘉が返事を返す間は、俺には踏み込めない。 藤嘉と過ごす図書室での時間は凄く楽しみで居心地が良いはずなのに。 その時間帯が訪れることが落ち着かない、モヤモヤする。 その原因については、自分自身でもう察しが付いている。 別に自分に彼氏が欲しいかと考えればそうではなくて。 彼氏がいる藤嘉が羨ましい訳でもない。 むしろ、俺はー… 藤嘉の彼氏である音弥の方を、羨ましく思っているんだ。
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