12・図書室での過ごし方

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藤嘉が音弥に送るメッセージ。 藤嘉が音弥向ける視線や想い。 それは一体、どんなモノなのだろう。 興味本位だった筈のそんな思いが日に日に少しずつ俺の中で姿を変えていくのは、自分自身がよく分かった。 よく分かったし、戸惑いもしている。 藤嘉から想いを受ける音弥が、羨ましいと感じてしまうのは、どうしてだろう。 俺はー……… 「なぁ、椋」 藤嘉からの静かな呼び掛けに、俺は思考を切った。 「ん?」 参考書から顔を上げる、藤嘉を見る。 藤嘉も参考書から顔を上げ、こちらを見ていた。 「花火大会があるんだって?」 「……あぁ、うん」 唐突な話にすぐには答えられなかったけれど、花火大会というワードは今日の昼休みに奏から聞いていた。 もうそんな季節か、と思いながら答える。 「花火大会ね。毎年期末テストの最終日にあるよ」 藤嘉はすぐに聞き返してくる。 「どこで?」 「河川敷」 「へぇ。引っ越して来てから河川敷なんか行ったことないや」 「出店とかも出て、結構混むよ」 「結構盛大な感じ?」 「割とね」 「椋は行ったことある?」 「あるよ。昔は家族と行ったり中学ん時は友達と行ったり」 「へぇ」 「てか、何で急に花火大会の話?」 俺がそう問うと藤嘉は一瞬言葉に詰まった。 思案するようにぱちぱちと瞬きをしてから、視線を落として言った。 「ちょっと聞かれたから」 「誰に?」 聞かなくても分かるのに、敢えて聞いた。 藤嘉は俺の想像通りの答えを口にする。 「音弥」 やっぱり、と思いながら俺は続ける。 「さっきの『定期連絡』?」 「ん?まぁ、そんなとこかな」 藤嘉はそう言って微笑んだ。
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