13・俺、今日行けない、ごめん

2/4

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
「椋杜、ヤバい…俺、全教科赤点かも」 終業チャイムと同時に半泣きで駆け寄ってきたのは奏だった。 「ドンマイ、補習頑張れ」 「いや、慰めてよ、椋杜ぉ」 「慰めたってもう期末は終わったんだから、次を見るしかないだろ」 「そうだけどさぁー…」 奏が大袈裟に項垂れる。 テストが終わる度に『赤点だ』と騒ぐ奏だけれど、いつもギリギリでそれを回避しているから、恐らく今回も大丈夫だろう。 そんな訳で、あっという間に期末テストが終わった。 帰り支度を始める俺に奏は言う。 「椋杜は良いよなぁ」 「何が?」 「頭良いから!毎回学年7番以内に入るじゃん!」 憤慨する奏に、ペンケースにシャープペンをしまいながら反論する。 「馬鹿野郎。それに見合った勉強時間とってんだよ、ちゃんと」 「俺だってなぁ、勉強しようと思ってるさ!でも何が分かんないかが分かんないんだよ!」 「じゃあ、授業中寝るな」 「朝練大変なんだよ!」 「知るかよ」 そう言ったら奏はしゅんと黙った。 急にしょげられると、ちょっと可哀想になる。 俺は言った。 「赤点取ったら勉強教えてやるからクヨクヨすんな」 「ありがと」 鞄のチャックを閉めながら俺は呟く。 「まぁ、俺も今回は7番以内は無理かもしれないし」 「え?」 奏が顔を上げる。 「テスト、出来なかったの?」 「うーん…自信ない」 「珍しいな、どうしたの?」 奏に問われて、言葉に詰まる。 どうしたの?って? テストが近付く、イコール、藤嘉と音弥が会う日が近付く、と言う事実が俺の勉強に対する集中力を掻き乱したからだ。 なんて、言えるか。 奏を見遣れば俺からの答えを待ってこちらを見ている。 「さぁ?どうしたんだろうな」 奏は、何か言いそうだった。 けれど、その言葉を待たずに俺は鞄を肩に掛けて立ち上がった。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加