13・俺、今日行けない、ごめん

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「じゃあまたな、奏」 「帰るの?」 「いや、部活。図書室寄る」 そう言って、一歩歩き出す俺に奏は言った。 「あ、椋杜。今日花火大会行く予定ある?」 「ぇ?」 花火大会というワードに反応して、振り返ってしまった。 奏が続ける。 「去年も誘ったけど、椋杜来なかったじゃん?今年はどう?一緒に行く?」 去年の花火大会、奏に誘われたけれど俺は億劫で断った。 奏やその他の同級生達と行くことが嫌だったわけじゃない。 あちこちに男女のカップルがいて必然的にそういう話ー…彼女欲しいとか、あの子可愛いから声掛けてみろよとか、アイツとあの子って付き合ってたんだとか…ーそういう所にわざわざ出向くことが嫌だった。 話を合わせるのも疲れるし、ボロが出ることも避けたかった。 同じ理由で、今年も億劫であることに変わりはないけどー… 俺は問う。 「河川敷まで行くの?」 「まだ決めてない。メンバーもまだ決まってないし」 河川敷まで行けば、藤嘉と音弥が一緒にいるところを見られる、かも。そんな考えが頭に過る。 「椋杜、来る?」 奏はもう1度俺にそう訊ねた。 俺は少し考え、答える。 「いや、今年も行かない」 「えー!?」 「来年また誘って」 「来年なんて受験生だから余計行かんだろ」 「ははっ。じゃあ、花火大会楽しんで来いよ」 膨れ面を見せた奏に手を振って、俺は教室を後にした。 廊下を、図書室に向かって歩く。 もしも、奏と花火大会に行ったとして もしも、藤嘉と音弥が一緒にいる所を見たとして 俺はどうするって言うんだろう。 俺にはどうも出来ない。 音弥と一緒にいる藤嘉に声を掛けることも出来ないし 藤嘉と音弥の関係を奏に上手く誤魔化すことも出来ないだろう。 それなら、大人しく引きこもっていた方がいいはずだ。 今までみたいに。
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