14・何の話?

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「あら、お前いたの?」 「そりゃあ、いるよ。俺の家だし」 「寝起き?」 「うん、気付いたら寝てた」 廊下の灯りが寝起きの瞳に眩しい。 俯き、目を擦りながら俺は言った。 「皐月くんは人の家で何騒いでんの?」 「お前の兄貴の所に遊びに来たんだろ!花火大会の日は毎年恒例だろうが」 「あぁ、」 花火大会の日は毎年、兄の友人は我が家に集まるんだった。 で、花火を見るでもなく麻雀やったりゲームやったりしてるんだった。 皐月くんはずっとそのメンバーの1人だったっけ。 藤嘉に気を取られて忘れていた。 「わざわざ椋杜に挨拶しに来たんだぞ」 「そりゃどーも。じゃあ、ごゆっくり」 そう言って皐月くんをあしらい、部屋のドアを閉めようとドアノブに手を掛けた時だった。 「てかさ、お前寝過ごしたらダメじゃん。もうちょっと焦ろよ。花火始まるぞ」 皐月くんがそう言った。 「は?」 ドアを閉めようとした手が止まり、眉間に皺が寄ったのが分かった。 皐月くんは続ける。 「俺のおかげで起きられて良かったな」 「ぇ?」 「今行けば花火見るのにはギリ間に合うだろ?」 「え、いや、ちょっと待って」 話を進める皐月くんにそうストップを掛けたら、皐月くんは首を傾げた。 俺も首を傾げ、皐月くんに問う。 「え?何の話?」 皐月くんは目をパチパチさせてから言った。 「え?待ち合わせ。寝過ごしてるんだろ?」 「…誰が?」 「椋杜が」 「はぁ?誰との待ち合わせだよ?」 噛み合わない会話に、俺の眉間の皺は深まっていき、皐月くんの眉間にも皺が寄っていく。 皐月くんは言った。 「鈴木と、だよ」 皐月くんの口から出たその名前が、自分のことを指すわけではないことはすぐに分かった。 それはすぐな分かったのだけれど、皐月くんの話が上手く飲み込めない。
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