15・笑ってんじゃねぇ

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夜の帳が下り始めた学校は、ひっそりとしていた。 校門脇の古びた街灯の下に自転車を止める。 全力で自転車を漕いできて上がった息を整えながら、辺りを見る。 暗くなり始めた空に浮かぶのは誰もいないひっそりとした校舎。 何台か自転車が置き去りにされている駐輪場。 真っ暗な生徒玄関ー… そこに藤嘉の姿は、なかった。 音弥が来たのか?もしくはもう帰ってしまった? 藤嘉に連絡しようにも、その手段がない。 今更スマホを部屋に置いてきたことを悔やんだ。 「最悪っ…」 整わない息の合間に悪態をついたその瞬間だった。 「椋?」 耳に、柔らかな低い声が届いたのは。 勢い良くそちらに顔を向ける。 校門の向こう側の暗がりに、藤嘉が立っていた。 訪れ始めた夜の闇に溶けてしまいそうな黒髪の毛先はぴょんと跳ねていて、夜風に微かに揺れる。 ティーシャツとジーンズ姿というラフな格好だけれど、ヨレヨレの部屋着で飛び出して来た俺よりはきちんとしていた。 そしてそんな藤嘉の隣には、まだ誰も立ってはいなかった。 奥二重の目を丸くして俺を見ながら、藤嘉はこちらに近付く。 ぼんやりとした街灯が藤嘉の姿を薄く照らしだす。 藤嘉は続けた。 「何してるの?」 滲み出した汗をティーシャツの袖で拭いながら俺は答える。 「それはっ、こっちの、セリフだっつーのっ、お前こそ、何、してんだよっ、」 「…ぇ?」 呼吸が整いきらないままで言った言葉は、途切れ途切れになってしまった。 俺は1度言葉を切り、息を吸う。 1人で立つ藤嘉を見遣る。 これから音弥が来るのか? それとも既に音弥と藤嘉は合流して会ってる? だとしたら、皐月くんの言葉を鵜呑みにして勢いだけでここまで出て来てしまった俺はめっちゃ間抜けな訳だけれど。 けれどー… どんなに頑張ってもまだ整いそうにない呼吸の間に、俺は続けた。 「音弥、は?」
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