16・あの花火大会の夜から2日経った

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『椋』 藤嘉の声がする。 俺の腕の中で。 俺の耳元で。 『椋、ねぇ』 藤嘉の息遣いが伝わってくる。 抱き寄せた掌から。 抱き締めた全身から。 今この瞬間、お互いにこの世界で1番近くにいる。 音弥よりも誰よりも、俺が藤嘉の1番近くにいるのにー… 俺たちの心は、きっと掛け離れた所にいる。 藤嘉が俺の背中に手を回さないことが証拠だろう。 『ごめんな』 それは、何の謝罪? 『ありがと、椋』 それは、何の感謝? 俺は謝罪も感謝もいらない。 謝罪も感謝もいらないから 俺より弱い力でいいから 俺の背中に、その腕を回してくれないだろうか? ねぇ、藤嘉。 そんなことを思う俺は、きっとー… 藤嘉のことが好きなんだと、想う。
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