18・好きな男が出来た

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藤嘉のことが好きだ。 あの花火大会の夜の藤嘉が可哀想で、それ以上に愛しく想った。 抱き寄せた藤嘉が、俺のことも抱き締め返してくれないかと期待した。 それもこれも全部ー…俺が藤嘉のことが好きだからだ。 だからこそ、音弥の話なんか聞きたくなかった。 音弥の話を聞くくらいなら、言ってしまおうと思った。 むしろ、言ってしまいたかった。 藤嘉のことが好きだ、と。 だけど 藤嘉は言わせてもくれなかった。 あの花火大会の後にも、藤嘉と音弥は連絡を取り合っていて。 それはつまり、2人はまだ恋人同士なわけで。 音弥は、ドタキャンしたことを凄く反省してて。 それはつまり、藤嘉への想いがあるからで。 藤嘉は、きっと絶対そんな音弥を許していて。 それはつまり、音弥への想いがあるからで。 藤嘉は、俺に抱き締められた意味が分からないほど鈍感じゃなくて。 それはつまり、藤嘉は俺の想いに気付いているわけだろう。 だからこそ、藤嘉はー… 俺には、俺の気持ちを言わせてもくれない。 花火大会の夜、でまかせに皐月くんに俺の名前を言ったくせに。 悲しさを隠して、よく出来た作り笑顔で笑ったくせに。 『椋みたいにすぐ来てくれるわけじゃない』と言って、俺と音弥を比べたくせに。 俺の肩にその頭をもたげたくせに。 大人しく俺に抱き締められたくせに。 肝心な部分は、言わせてもくれないのかよ。 …そんなの、狡くね?
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