18・好きな男が出来た

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藤嘉に、言った。 藤嘉に、言えた。 好きだ、と。 そう思った瞬間、背中がゾワリと粟立った。 また心臓の音が俺の身体の中から喧しく騒ぐ。 けれど、心は軽かった。 俺の言葉は藤嘉にしっかりと届いたはずだ。 薄い唇を噛みしめた藤嘉は、瞳を細めて眉をしかめる。 その表情の裏にどんな想いがあるのか、俺には読み取れない。  けれど、昨日藤嘉が『俺も椋のその話の続きは聞けない』と言ったことを思えば、俺が望む想いを藤嘉は抱いてはいないだろうことは覚悟する。 それは、分かってる。 分かっていた、藤嘉には音弥がいるのだから。 小さく息をついてから、俺は言った。 「藤嘉」 名前を呼べば、藤嘉の黒目が動いてこちらを見る。 視線が交わる瞬間にようやくゆっくりと瞬きをした藤嘉に、俺は続けた。 「なぁ、指切りしたよな?」 藤嘉は軽く視線を下げて、答える。 「…うん」 「俺に好きな男が出来たら、何でも答えてくれる約束だよな?」 「……」 藤嘉が黙る。 また改めてきゅっと唇を噛む藤嘉に俺は続ける。   「それとも、針千本飲むか?」 藤嘉が小さく呟いた。 「針千本は、キツいなぁー…」 藤嘉は項垂れる様に俯き、ふふっと自嘲気味に笑う。 そして俯いたままで続けた。 「椋」 優しい呼び掛けに、喧しく鳴る心臓がぎゅっと締まった。 藤嘉の言葉が続く。 「先に聞いてもいいか?」 「その後に藤嘉が何でも答えてくれるならな」 藤嘉のペースに飲まれないようそう言って釘を刺せば、藤嘉はまたふふっ、と笑った。 そして、優しい声で続けた。 「何で、俺なの?」 藤嘉のそんな問いに、すぐに答えたのは反射的だった。 あれこれ考えて挙げ句に答えを失ってしまう前に、口は動いていた。 「俺が藤嘉を好きなことに理由なんかいるか?」 藤嘉がパッと顔を上げる。 「そんなこと聞く藤嘉には、音弥を好きなことに理由があるのか?」 俺がそう言葉を続けたら、藤嘉は酷く困ったように眉を下げた。
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