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だけど、好きな子の命も背負っているとなれば、平凡だった日々に想いを馳せている場合ではない。
「カルアちゃん、三階に戻ろう。まだ探せてない場所もあるし、もしかしたらみんなが同じ部屋の別の場所に隠してた可能性だってあるよ」
「ユージさん……」
そんな奇跡のようなことは無いとわかっていながらも、今だけは自分たちに都合良く頭を働かせる。
後ろ向きになっている時間はない。後悔をするのなら、タイムリミットを迎えてからでいいだろう。
俺は絶対に諦めない。
「諦めてなんかやるもんか」
俺はカルアちゃんの手を取って、再び三階への階段を目指す。
東階段側にはねりちゃんの遺体があるのでできれば通りたくはなかったが、西階段では遠回りになってしまう。
俺は真っ直ぐ前だけを見るようにして、目的の理科室へと入っていった。
理科室特有のニオイが、俺はあまり好きではない。
ホルマリン漬けのような不気味なものは置かれていないが、薄暗い中で目にする人体模型などは、やはり気味が悪い。
(……あれ?)
違和感を覚えたのは、本当に偶然だった。気味の悪さは承知だが、人体模型に近づいていく。
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