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本来なら、ダミーちゃんの悪ふざけに構っている暇などないし、時間稼ぎをしようとしている可能性だってある。
それでも俺は、なぜだか嫌な予感を拭い去ることができずに、図工室に向かうことにした。
どのみち西階段を下りていくのだし、二階の階段の斜め前に図工室はある。
少しだけ覗いてみて、ダミーちゃんのイタズラなら無視して当初の予定通りに体育館へ向かえばいい。
「行ってみよう」
俺の意見にカルアちゃんは反対することもなく、二人で図工室を目指していく。
二階に到着しても物音が聞こえる様子はなかったので、俺は極力音を立てないようにして図工室の扉を開いた。
「……ダミーちゃん?」
室内を覗いてみると、ダミーちゃんは中央辺りの椅子に座っていた。
財王さんはいないようだが、呼びかけてみても反応を示す素振りを見せない。
やはり俺たちを足止めする作戦かと、すぐに踵を返そうとしたのだが。
ポタリ……ポタリ……。
耳に届いた規則的な水音に、俺は自然と足を止めていた。
その音はどうやら、ダミーちゃんのいる方から聞こえてきているようだ。
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