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「ダミーちゃん、ふざけたいなら今度にしてくれよ。人の生死が関わってるんだ、どうしても邪魔するっていうなら……」
そこまで言いかけた俺の腕を、隣に立っていたカルアちゃんが引っ張る。
問うまでもない。その意図はもう、俺にも十分すぎるほど伝わっていた。
隠れていた月が雲間から顔を覗かせた時、室内は淡く照らされる。
机に背を預けるようにして椅子に座っていたダミーちゃんには、左肩から右の脇腹にかけて切り傷があった。
それはぱっくりと開いたその場所から、臓器が視認できるほどの大きな傷口だ。
水音の正体は、彼女の身体の傷口から床に滴り落ちる血液だったのだ。
足元や椅子の周りには、広く血だまりができている。
「な、何で……だって、ダミーちゃんは人形探してたはずじゃ……」
あらぬ方向を見つめる彼女は、すでに事切れているのだとわかる。
彼女は意欲的に人形探しをしていたし、財王に対しても協力的だった。
だが、目の前の彼女は自らの手で命を絶ったわけではないことだけは明らかだ。
「ユージさん……これって、トゴウ様の呪いですか……?」
「わからない……わかんねえよ……」
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