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みんなが机に向かっている中、遠くからガシャン、ガキン、とガラスが割れるような音や金属を叩く音が聞こえてきた。
「・・・ちょっと様子を見てきますね。えっと、52ページを開いて待っていてください」
からから、と軽い音を立ててドアを開き、担任が姿を消す。
「なんだろ、不審者とか?」
「野良犬侵入?」
「んなわけねーだろw」
「授業潰れるなら嬉しい」
「がちそれな」
教科書を開く作業なんて数秒で終わる。もちろんその後の時間は雑談に使われるわけで。
「もう早く帰りたーい」
「今日部活ねぇの?」
「あー・・・あるわー・・・」
「ふぁいとーw」
「うっせー、帰宅部野郎」
だら〜とした空気が教室全体に広がり、あちらこちらで笑い声が上がる。
「麗華ぁー」
うにゅー、と背中にのしかかってくる紗耶を引き剥がす。
「どうしたの?」
「なんかー血の匂いがする、的な??」
くんくんと匂いを嗅ぎ、おえーと言うような顔をしている紗耶。
私も真似して空気を嗅ぐ。
「確かに」
「でしょー!」
血の匂いがする。生臭い。
「あれ、なんか変なにおいしない?」
「えー、してないよ??」
「いやいや、鉄みたいなにおいしてるって」
みんなも異変に気づいたようで、騒ぎ出す。
「誰か怪我してるのかなー」
紗耶が全く見当違いの言葉を漏らした。
「それは違う。だって、外から匂いがきてるし、1人が怪我したくらいじゃ、こんなに濃く匂わないもの」
「あーそっかー」
相当な数の人が血を流しているのではないか。
今更ながら私は皆に声をかける。
「ねぇ、なんかあった時の場合に避難の用意しといたほうがいいと思うんだけど」
「あねー」
「りょーかーい」
「はーい」
返事とともに、すぐに移動できる支度や、ドアを開放しておくなどの処置が行われる。
流れ込んでくる血生臭さは濃くなってきて、吐き気を催しそうだった。
そして、音が聞こえるようになった。
ザリ、ザリ、という床をこする音。
ドン、ドン、という足音。
キィ、キィ、という歯車のような音。
他にもたくさんの音があって、その全てが異常事態を物語っていた。
「え、やばくね?」
「なにこれ、怖いんだけど」
「先生たちはどこ行ったん?」
「なんかの演出じゃない?」
「ありえる!」
「やだやだ、怖いの無理なんだけど」
口々に不安の声や楽観的な考えが教室に渦巻く。
「紗耶、ちょっと見てくる」
「気をつけてー」
「みんな、ちょっと静かにしてて?様子見てみる」
「はーい」
紗耶とみんなに伝えてから席を立つ。できるだけ音を立てないようにして、ドアを開いた。
教室のドアから顔を出し、左右を伺う。
「・・・・・・っ?!」
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