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私から見て左側――先生が向かった方向に、この世のものとは思えない、奇怪生物がいた。何匹も何匹も、廊下の先が見えない程度に。
それらはほとんどが血にまみれていて、赤黒くてかっていた。
一番前にいる、目がたくさんある怪物の口から物体がはみ出ていた。
それがなにか理解した途端、私は猛烈な吐き気と目眩に襲われて、ドアを閉めた。
「ねね、何があったのー?」
「真っ青だけど大丈夫?」
「先生たちのドッキリだったっしょ?」
「え、ほんとに具合悪そうだけど、だいじょぶそ?」
怪物の口からはみ出ていたのは、血で染まった担任の頭と、部活の先輩の足だった。
「・・・・・・落ち着いて、聞いて。今この学校は、おかしい。変な生き物がたくさんいるの。先生も、3年生も、やられてる。正確に言えば食べられてる」
「え、食べ・・・・・・?」
「生き物・・・・・・??」
困惑気味に、私を見つめる皆。
「廊下が、埋まってる。たぶん今は動かないから見ても大丈夫だと思う。1人1人、ゆっくり見るなら、ね」
その後、一人ずつ廊下を見た。
「何あれ・・・・・・?!」
「先生が・・・っ」
「え、なにこれ、夢?」
「嘘・・・」
全員が呆けたように座り込む。
「これからどうする?」
私は一応学級委員を努めている。こんな状況下でも、場を仕切るのは私の役割だ。
「ここにいたら、あれがいつ入ってくるかわからないよね」
「移動する?」
私はその言葉に頷く。
「そうしたほうがいいと思う」
バタバタと慌ただしく立ち上がり、何人かで固まる。
後ろのドアからそっと出て、あれとは別の方向に向かう。
少し薄暗いのもあってか、気づかれずに上階に行くことが出来た。
「うっ・・・・・・?!」
「やだ・・・!」
「きもちわるー・・・」
「え・・・・・・せ、んぱい?」
3年生の教室に入ると、床や壁、天井にまで血がついていた。
「なによ、これ・・・」
呆然と呟く。
部活の先輩が、近所のお兄さんが、塾が同じ人が。
―――そして、姉が。
沢山の人達が、血まみれで倒れている。
姉がいたのは、教室の前らへんに横たわっている無数の屍の中。
「・・・お姉ちゃん・・・」
遺体をふまないようにして姉の体に近づく。
体は食い破られていて内臓が引っ張り出されている。
かなり、凄惨な状態だ。
なのに、何も感じられない。もう、麻痺したのだろうか。
ぼんやり考えていると、ひゅっ、という音がした。
「はっ・・・ひゅ・・・ぁ・・・は、ぁ・・・ゔぅ・・・くる、し・・・」
紗耶だ。胸を抑えて蹲っている。荒い呼吸が繰り返され、苦しげな声が漏れる。
「紗耶っ!」
駆け寄り、背中を擦る。
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