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「大丈夫、ゆっくり息吐いて。みんなは窓開けてくれる?」
「お、おう」
「わかった・・・」
クラスメイトたちの手によって窓が開け放たれ、新鮮な空気が流れ込む。
「10秒間くらい、ゆっくり吐こう」
声をかけながら紗耶の頭を撫でる。
しばらくすると回復したようで、一つ息を吐いた。
「ふー・・・ごめん、ありがとー・・・」
弱々しく抱きついてくる彼女をポンポンと叩き、ゆっくり立ち上がる。
「大丈夫」
「・・・・・・お姉さん?」
私の視線の先を辿って紗耶が言う。
「そう・・・死んでる」
「・・・・・・」
ぎゅ、と抱きしめられた。紗耶は身長が低く、高めの私にハグするために、背伸びをしている。
「ふふ、大丈夫だよ。ありがと」
紗耶が笑ったのを見てからみんなに呼びかける。
「とりあえず、学校出ない?誰か大人とか警察とかに言って、なんとかしてもらわなくちゃ」
「賛成」
「そうしよ・・・」
「うん・・・」
呆然自失しながらゆらっ、と立ち上がる人がほとんど。泣いている子も多い。
昇降口に向かうまでにも、あれがたくさんいた。大きさも、形も、色も、全部違っていた。そして、例外なく全てが血に濡れていた。
「あれ・・・開かない・・・?」
ドアを開けに行ってくれた男子がガチャガチャと扉を揺らす。
「そんなことあるわけ・・・」
3人がかりで戸を押しても、動かない。もちろん、鍵はかかっていないし、このドアは引き戸でもない。
「嘘・・・」
「閉じ込められた、ってこと?」
「窓は?」
「・・・・・・開かない」
「やだ・・・」
「ちょ、え・・・?」
困惑とパニックが場を支配する。
その時私の足が、なにかにあたった。
「ん・・・?」
古めかしく、人差し指ほどの大きさの鍵だ。
「麗華?どうかした?」
「美雪、見てこれ」
鍵を近くに来た美雪に見せる。どんな事があるかわからないから、触らない。
「わぁ、お洒落な鍵だね」
私の思いも知らず、美雪は鍵を手に取った。
―――その瞬間。
足元が激しく揺れた。まともに立っていられなくなり、叫ぶ。
「美雪!鍵、鍵を、離して!」
「わ、わかった!」
美雪が鍵を投げ捨てる。揺れは収まらない。
「ちょっと、こんどは何?!」
「いってぇっ!!」
「やだ、こわい!」
「おい、何なんだよ!」
ガリ、ガリと音が聞こえた。
振り向くと、紫色の、ドラゴンらしき生き物がいた。ドラゴンもどきは床を爪でひっかいている。
「ぎいゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ドラゴンは咆哮を上げて、翼を床に叩きつけた。揺れが一段と激しくなり、全員が倒れる。
私が倒れた手の先に、鍵があった。必死でそれを掴む。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
何かが潰れる音とドラゴンの叫びを最後に、私の視界は真っ暗になった。
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