3人が本棚に入れています
本棚に追加
私は仰向けの状態で目が覚めた。
目に最初に入ったのは天井。学校のものではない。
体を起こし、部屋を眺める。
おそらく相当な豪邸だろう。私がいる部屋だけでも20畳以上はありそうだ。
おいてある調度品は木製のものが多く、重々しい雰囲気を醸し出している。
「・・・ん・・・」
その時、私は自分の首に何かがかかっていることに気づいた。紐を引っ張って服の中から何かを出す。
あの鍵だった。かなり豪華だがあまり重さは感じない。私はその鍵を服の中に戻した。
さてと、ここは私の知らない部屋だ。
他の皆はどこにいるのだろう。そもそもここはどこなのだろう。私は死んだのだろうか。もし死んだのだとしたらなぜだろう。
疑問はさておき、ベッドから降りた私はドアへと向かった。
「・・・・・・開いた・・・」
ドアには鍵などかかっておらず、軽い音を立てて開く。
私はそっと廊下に出て、耳を澄ました。
かすかに、何かを引きずる音が聞こえる。
誰かが叫んでいる声がする。
ガラスが割れる音がする。
「・・・・・・ふー・・・・・・」
一度深呼吸をしてから、声がした方向に向かって歩き出す。
ふかふかの絨毯は、私の足音を少しだけ消している。そして、他の誰かの足音も消してしまえるということでもある。
ゆっくり歩いて、角を曲がる。
十数メートル先に、狼のような獣がいた。
4本の足に、銀色に近い体毛。そして鋭い爪の中には―――肉と、血が詰まっていた。
「っ・・・・・・!」
思わず後ろに後退りする。かたん、と小さな音がなり、獣がゆっくり振り向いた。
「があぁ・・・・・・!」
その目は黄色で、新しく見つけた、“私”という獲物を、舐めるようにして見つめた。口は、人間の血で真っ赤だ。
狼もどきの背後には、おそらく先程まで喰われていたのだろう人が転がっていた。
私を睨んでいる狼の足が亡骸の頭に当たり―――紗耶の顔が見えた。
間違いなかった。小学校の頃から同じだった親友の顔を間違うはずがない。
今、狼の足元に転がっているのは、狼の体の中にいるのは、紗耶なのだ。
紗耶は、これに、喰われたのだ。
「紗耶・・・・・・っ!」
私の胸に、怒りという名の炎が咲いた。
狼もどきを睨み返す。
「ぐるるる・・・・・・」
手を握りしめ、深く、細く息を吐きだす。
精神、思考が研ぎ澄まされていき、感覚が鋭くなるに連れて、何かが出来上がっていく。
やがて、それは私の手の中で剣になった。
刀身の部分が光沢のある銀色で、柄の部分に青い石がついている。細くて長めの剣は、私の手にとてもよく馴染んだ。
「ゔぅ〜・・・・・・」
低い唸り声を上げた獣に対し、私は剣を構えた。
恐ろしいスピードで私の前に来た獣に向かって剣を振るう。
「ぎゃんっ!」
最初のコメントを投稿しよう!