王家に転生したので最悪の人生やり直して魔術で世界平和に導きますw

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「まさかここでやるつもりか?」 サウザーは周囲を見渡しながらつぶやいた。俺も困ったことになったと思った。裏道とはいえ、こんな街中で魔術をぶっ放したら被害は相当なものになる。さらに噂はクリスタル城まで届いてサーロン国王にバレるのも確実だ。 「やるってのなら容赦しねぇぞ」  コランが強気に言った。 「待つのじゃロゼ様、こやつらとここでやり合うのは我々の中でも犠牲が出る。ここは引く判断を」  ジルは俺に小声で言った。  だが獣族は人間より研ぎ澄まされた動物としての身体能力を持っている。耳の良い動物の一つである犬にはその小声がこちらまで聞こえてきた。 「逃げるってそう簡単に逃す訳ねぇだろ。先手必勝だぜ」  犬の姿をした獣族の男は4速歩行で俺達五人の居る場所に襲いかかってきた。  狙われたのは俺だった。犬の牙で俺に噛みつこうとしてくる。 「白魔術 白剣(はくけん)」 魔力量10万  俺は応戦した。牙を白剣(はくけん)でガードした。 「ガルルルル」  犬の男は唸り声を上げると咥えていた白剣(はくけん)を離して跳躍した。 「無限炎犬(バーニングバン)」 魔力量5万  炎を纏った具現化された犬が俺の周りに現れた。その数は増えていき数えられない程の数となって襲いかかって来た。 「白魔術 白面六臂(はくめんろっぴ)」 魔力量20万  6つの腕が無限炎犬(バーニングバン)の無数の犬を殴り飛ばす。見えないほどの速さで攻撃が繰り返される。やがて全ての犬が消えた。 「ポンチの無限炎犬(バーニングバン)を退けるとはな。白魔術恐るべし」 「ザッカリー殿。あいつ何者なんですか?」  ポンチと呼ばれた犬の獣族はザッカリーと言われたトラの獣族の元まで下がって来た。 「あれが例のサーロン国王の長男ロゼだ。突然変異で生まれた時から白魔術を使えたらしい」 「突然変異…」  ザッカリーは2速歩行に変更して前に出た。 「ロゼよ。俺とサシでやらないか?」 「なっ、ザッカリー様?」 「お前達は手を出すな。ブースター軍団流のやり方だ。命かけた契約の元での一対一のバトル。どっちらかが死んだ時生き残った方の言うことを聞く。どうだ?」  俺は感知魔術でもう一度ザッカリーの魔力量を測った。  魔力量27万。  行ける。 「いいだろう。やろう」  俺はアップで腕を振り回した。 「ロゼ様。危険です。獣族の強さは魔力量よりもその身体能力にあります。魔力量の差でそれが埋められないと死にますよ」  リスターは止めようと歩き出した。  それをジルとサウザーが手で制した。 「なっ?」 「ここはロゼ様に好きにやらせて見よう。なんたって次期国王になる器があるのだから」  ジルがそういうとサウザーも頷いた。 「ほう、やる気だな。いいだろう。結界魔術 獣宴会場(ケモノノマジワリ)」 魔力量5万  俺とザッカリーの二人を囲む結界が張られた。 「この結界はどちらかが死ぬまで出れない。俺が死んだらブースター軍団はロゼやその仲間に手は出さない。お互い悔いなくやり合おうぜ」 「望む所だ」  -この結界魔術自体に特に目立った仕掛けは無い。ザッカリーとかいうトラのおっさんの魔力量じゃ、俺の魔力量には敵わない。命をかけた戦いだか知らないが最初から俺に勝算があるんだよ。 「風加速(かぜのかそく)」 魔力量 1000 「白魔術 白剣(はくけん)」 魔力量 10万  俺は白剣(はくけん)を持って結界内を高速移動した。トラの身体能力に勝つにはこのぐらいのスピードが必要だろうという判断だった。 「ふん、少し希少な魔力量を持っていても所詮はガキのお遊びだな。魔術覚醒(リミッターオン) 肉体変化」  ザッカリーは全身に力を入れた。体の血管が浮き上がる。俺は見るからにザッカリーの筋肉量が増え巨大化していくのが分かった。 「なんだ…その姿?」  俺は5mを超える巨人となったザッカリーに驚いた。 「ふん、くたばれ」  ザッカリーが踏み出した。目にまとまらなぬ速さで俺の目の前にやってくる。だが、ザッカリーが動いた時の風圧を利用して風加速(かぜのかそく)で避けた。  ドゴォォォ  ザッカリーが空振りして殴った地面は大きな音を立てて穴が開いた。  -なんて威力だ。ありゃまともに当たったら即死だな。  俺は結界を蹴り上げてザッカリーの背後を取った。白剣(はくけん)を振りかざす。 「くらえ」  だが剣を降り下ろすよりも先にザッカリーの手が伸びて来た。大きな手で器用に白剣(はくけん)を掴んだ。 「なに…? マジかよ」 -白魔術の攻撃を素手で掴んだだと? そんなことあり得るのかよ。ならば…。 「白魔術 白面六臂(はくめんろっぴ)」 魔力量20万  俺は再び6つの腕が生えた巨人なロゼを出現させた。その6つの腕が白剣(はくけん)を掴んだ。 「うおおおおおおおお」  ザッカリーとの白剣(はくけん)の引っ張り合いが始まった。ザッカリーはトラの額に汗を掻きながら引っ張っている。だが、白魔術の6本の腕には敵わなかった。ザッカリーの手から白剣(はくけん)が引きずられた。 「よし」  白面六臂(はくめんろっぴ)を再び構えた。手の一つに白剣(はくけん)を握っている。 「くらえ、白拳礫(ホワイトフィスト)」  6つの拳がザッカリーを襲った。 「クソ、強いな…」  避けられなかった。ザッカリーは咄嗟にガードしたがその力は絶大だった。 「ぐっ…」  グラつく体を足で踏ん張り、ザッカリーは全ての攻撃に耐え抜いた。 「この攻撃を食らっても生きてるとは、獣族ってタフだな」  俺は素直に感心した。このままじゃ俺の魔力量も心配だ。  その時、何者かが物凄い速さでこちらに向かって来ている事に気づいた。なんだ?  俺はその何者かに対して構える暇もなく結界ごと吹き飛ばされた。幸いまっすぐな道だったので民家にぶつかることはなかった。俺は起き上がってからそのことを確認して安心した。前を見るとライオンの姿をした獣族がこっちを見ていた。
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