ラブホテルで心を通わせる二人

7/13
前へ
/970ページ
次へ
「気持ちいいか?」 「た……、た……ぶん……っ」 「じゃあ、こっちは?」  そう言ってマティアスはプクンと膨らんだ肉芽を、親指でゆっくり潰してきた。  そしてコリコリと左右に揺さぶり、指の腹で転がしてくる。 「んぁああ……っ! あっ、そこは……っ」  とっさに下腹部に力を込めると、マティアスが嬉しそうに笑った。 「気持ちいいんだな? じゃあ、ここを可愛がろう」  マティアスは指で膣壁を優しく擦りながら、親指で麻衣の肉芽を愛撫する。 「あ……っ、ぁ、あ……。ん……っ、んぁ、あぁ……」  今までマティアスの手を見て、「大きくて綺麗な手だな」と感じていた。  自分はバレー部出身で、体格がいいのも相まって、掌が肉厚でがっしりとした手をしている。  香澄のように華奢な〝女性の手〟ではないと開き直っていた。  けれどマティアスの手は、身長が高いのも相まって本当に大きい。  彼の手と並べると、自分の手がとても小さくて〝女性の手〟に見えてしまう。  そうすると、今まで無視してきた自分の性別を痛感させられる。  気がつけば麻衣は、マティアスと過ごしている間、ずっと彼の手や体格を意識していた。  その〝男の手〟が、今自分を愛撫し、指で膣内を暴いている。 (マティアスさんの手が……っ)  あの大きく美しい手が、お世辞にも綺麗とは言いがたい場所に潜り、自分に快楽を与えてくれている。  そう思うと、どうしてか泣きたくなった。  膣内を愛撫されて嬌声を漏らし、切なげに開いた口からは涎が零れてしまいそうになる。  こんな美形のドイツ人男性に愛されているなんて、いまだに信じられない。 「マ……っ、マティア、す、……っさ……っ」  手探りで彼を求めると、額にキスをされる。 「なんだ? マイ」  彼の名前を呼ぶと、愛しげに応えてくれる。  その声を聞いて、胸の奥がキュウッと切なく締め付けられた。  さらに太腿には、先ほどからずっとガチガチに強張った屹立が押しつけられていた。 (興奮してくれてる……)  今まで〝男性が勃起する〟と聞くと、半分揶揄の籠もった感情を抱いていた。  動画では興味半分で、リアルで聞けばドン引きしてしまう時だってある。  それを「嬉しい」と感じる日がくるなんて、思いもしなかった。 「……す、…………す、き…………っ。…………か、かも……っ」  震える声で告白した時、目元を覆っていた彼の手が外れた。 (まぶし……)  バスルームは落ち着いた明るさのライトで照らされていたが、ずっと目を閉じていたので、当然眩しく感じる。  目を瞬かせると、少しぼやけた視界の中で、マティアスがどこか呆けた顔をしているのが見えた。  その表情がゆっくりと笑み崩れ、今まで見た事のない心からの笑顔になる。 「…………!」  彼の笑顔を見て、胸がドキンッと高鳴った。  そして何とも言えない感情がこみ上げ、麻衣まで泣き笑いの表情になってしまう。 「俺も好きだ。大好きだ。……愛してる」  マティアスは幸せそうに笑い、堪らないというようにまた麻衣の唇にキスをしてきた。 「んっ、……ん、――ン」  膣壁を擦られ、肉芽をコリコリと転がされながら、口元ではうっとりするようなキスをされ、夢見心地になる。 (幸せだ。……こんな幸せでいいのかな……)  麻衣はそう思いながら、マティアスの舌をおずおずと舐め返し、彼の舌先にチュッとキスをする。  お腹の奥では快楽の熾火が育ち、気を抜くと絶頂してしまいそうだ。  けれど人の前で絶頂するなど恥ずかしく、先ほどから懸命に堪えている。 「マイ。ナカがヒクヒクしていて可愛い。気持ちいいか?」 「う……、う……ん。き……きもち、……いい」  マティアスと目を合わせて「気持ちいい」と言うのはハードルが高く、麻衣は彼の首元に顔を埋めてボソッと返事をする。 「そうか。嬉しい。達けそうだったら、いつでも達ってくれ」  マティアスは嬉しそうに微笑み、横を向いた麻衣の耳やこめかみ、頬にキスをしながら、なおも指を蠢かかせた。 「ん……っ、んぅ、あ、……ん……っ」  話す事で快楽を誤魔化していたが、そろそろ我慢しきれなくなっていた。 (駄目……っ。達っちゃう……っ)  麻衣が反射的に首を左右に振った時、彼女の耳元でマティアスが囁いた。 「気持ち良かったら、俺のために達ってくれ」  目を開けると、マティアスのがっしりとした肩や鎖骨が見える。  素直に美しいと思える、均整の取れた男性の肉体だ。 (綺麗な人だな……。心も、体も、全部綺麗だ……)  そう思うと、なぜだか涙がこみ上げてくる。 (私が気持ちよくなったら、この人は喜んでくれるんだ……) 『私なんかがセックスで感じたり、あんあん声を上げても気持ち悪いだけだ』と、自分で自分を否定していた。  けれどマティアスは、自分のすべてを求めてくれている。 (嬉しい……な……)  ――気持ちいい。  その二つの感情を素直に受け入れた麻衣は、歓喜のあまりに涙を零す。  そしてマティアスをギュッと抱き締め、絶頂した。 「あ! ――っあ、ぁあああ……っ、――ん、…………ぁあ……っ」  麻衣は太腿を閉じてマティアスの腕を挟み、初めて男性に達かされる感覚に溺れる。 (っ気持ちいい……っ……!!)  彼女は全身を力ませて大きく震えたあと、心地よい気だるさに包まれ、脱力していく。  脱力した体は、マティアスがしっかり支えてくれた。 (こんなふうに、人に身を任せてもいいんだ……)  それもまた、初めての経験だった。 「気持ち良かったか?」  マティアスは蜜壷から指を抜き、愛しむ目で尋ねてくる。 「……うん」  麻衣は恥ずかしさも忘れ、ボーッとして頷く。 「そうか。良かった」  微笑んだマティアスは、麻衣を自分の脚の間に座らせ、彼女の肩にお湯を掛ける。  まだ体には力が入らず、下手をすればズルズルと崩れ落ちてしまいそうだ。  けれどそうならないように、マティアスがしっかりと抱き締めてくれている。  その包み込み、守られている感じが心地いい。  やがて気だるさから回復した麻衣は、ずっと思っていた事を尋ねた。 「……あの」 「ん?」 「……マティアスさんはこれでいいの?」 「何がだ?」 「……こ、これ。……つらくないの?」  そう言って麻衣は少し腰を浮かせ、腰に当たっていたマティアスの屹立に触れる。 「……こんなに大きくなって……。だ、出したいなら……協力するけど」  当然未経験だが、動画を見て、フェラチオや手での愛撫のやり方は大体分かっている。  歯が当たったら痛いとも知っていて、雁首を攻めると気持ちいいらしいという事も知っている。 (最低限の事さえ守れば、多少へたくそでも喜んでくれるんじゃ……。……と思うけど、どうなんだろう)  彼にも気持ちよくなってほしいと思って言ってみたのだが、マティアスは恥ずかしそうに微笑んだあと、緩く首を横に振った。 「マイは初めてなのに、そこまでは求めていない。でも気を遣ってくれてありがとう」 「う、ううん。私こそ……ご、ごめん」  積極的すぎて引かれないか気にしたのに、マティアスは麻衣の手をとり、お姫様のように口づけてきた。 「謝る必要はない。気を遣ってくれて嬉しい」 「念のため聞きたいんだけど、マティアスさんはそういうの興味ある? 手で……とか、口で……とか」 「マイがしてくれるなら何でも嬉しい。だがさっきも言ったように、経験がないマイにそんな事は求めない。何回も愛し合った過程で求め合ったなら、そういう流れになる可能性もある。だが今はいい」 「う、うん」  半分答えになっているようで、半分答えになっていない。  そう伝えようとしたが、その前にマティアスが続きを口にする。 「正直、俺はメイクラブに人並みな感想を持っていない。風俗に行った話はしたが、百戦錬磨のキャストを相手にして、よく分からないまま店を出た」 「……どういう事? キャストさんが上手くて夢見心地になったって事?」  麻衣は彼の言う事を理解できず、聞き直す。 「……いや……。心と体がついていかなかったのかな。体は性欲の盛りだったから、とても『ヤリたい』と思っていた。だが心はエミリアに支配され、快楽を得たいというより、ただストレスのはけ口を探していた感じだった」 「あぁ……。なるほど……」  説明され、ただの性欲で風俗に行ったのではないと知る。  男性の体の仕組みは分からないが、強いストレスを抱えていたら射精して発散したいという思いがあってもおかしくない。
/970ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4579人が本棚に入れています
本棚に追加