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「ねえ、ラース、黙ってないで、返事くらいしておくれよ」
老婆がちょっといらだった様子を見せる。
おっと、このキチガイ婆さんを、あまり逆上させないほうがよさそうだ。
ラースはあわてて、とりつくろった。
「あ……ああ……なかなか、いい考えじゃないかな」
愛想笑いを浮かべる。
そんな自分が嫌になるが、しようがない。
ラースは老婆から目をそむけ、ちらりと横のほうを見た。
アンナがふんふんと鼻歌を歌いながら、立ち泳ぎし、ボート小屋の外のほうを見ている。ラースと老婆のことには、もうあまり関心がないようだ。
きれいな彼女の横顔に見とれながら、ラースは思った。あの子となら、ヤるのも悪くない。人魚の女の子とのセックスは、どんなだろう? ひとつ、このババアと交渉してみようか。
ほぼ瞬時にそこまで妄想をめぐらせたときだ。老婆が言った。
「そうかい、ラース、あんたも賛成してくれるのかい」
老婆が、口の端を耳元まで裂くようにして、笑った。直後、ぶくんと海中に没した。
なんだ?
とまどったラースは、次の瞬間、
「ぎゃああああああっ」
絶叫していた。
彼の左足が、つま先から食われていたのだ。
ラースは悲鳴をあげながら、右足で、左足に食いついているモノを激しく踏みつける。無駄なあがきだった。どれだけ蹴ろうとも、それは離れることなく、ガジガジと左足の甲を食らい、かかとを食らい、足首へとその歯を進めていく。
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