3人が本棚に入れています
本棚に追加
「くっくっくっ」
と、老婆は気味の悪い笑いかたをした。「美形だねえ。あの人にそっくりだ」
老婆はしわだらけの手をのばして、顔をさわりにくる。
「よせ。やめろ。さわるな」
ラースは首をふって抵抗したが、無駄だった。両手でほほをはさまれた。老婆の指の爪が、ほほに食いこむ。彼女の手はひどく冷たかった。
目の前に、老婆の顔が迫ってくる。
醜い顔だ。
きつい三白眼。魔女のような鷲鼻。横に裂けそうな口。
なにより、その顔の表面だ。顔中に泡が吹きでたあとつぶれたように、あばたが全面に広がっている。正視に耐えない。
ラースは目だけをそらした。
もちろん、本当は、老婆から逃れたいのだ。だが、それは不可能だった。
ラースはいま、胸から下が海水につかり、桟橋に固定されていた。万歳の姿勢をとり、両手首には手錠がはめられている。手錠の鎖は、ロープによって、ラースの背後にある、桟橋のビットにつながれているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!