【連載小説】僕の好きなこと

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 僕は本が大好きだ。恋愛小説やミステリー小説が特に好き。その他には図鑑も好き。生物のそれが好き。僕が幼少のころ、両親はたくさん買ってくれた。  僕の名前は石垣哲太(いしがきてった)、23歳。職業は現場代理人。父のコネでこの会社に入れてもらった。だから辞めたくても辞められない。この仕事は僕には合わない。気性の荒い人たちばかりだし、工事現場の合材(ごうざい)(アスファルト)の計算が難しい。  みんなからは、哲太と呼ばれている。大卒だけれど、僕が働けるような仕事がない。自分で言うのもなんだけど、頭はいい。でも、人間関係は苦手。仕事をする上で1番大切なことなんだけれど。  今日は日曜日。月曜日から土曜日まで仕事。僕は仕事の要領が悪いせいか、いつも残業している。正直、疲れすぎて限界が近い。続けられるだろうか不安。辞めたら父の顔に泥を塗ることになるからそれはまずいと思った。だから、我慢我慢の日々。ストレスも溜まり放題。だから日曜日に大好きな読書をして解消している。  父も読書は好きみたい。小説や自己啓発本などを読んでいる。僕は思うことがある。自己啓発本って作者の考え方だから、それに自分を合わせる必要はないと思う。それを父に話したら、「あくまでも参考までに読んでるだけだ。無理矢理合わせることはしない」 と言っていた。 なるほどな、そういう考えかたなら読んでみるかな。僕はパソコンを開き、古本屋のサイトを観てみた。検索してみたら様々な啓発本が出てきた。その中に父が読んでいるものと同じ本を見つけた。これなら買うんじゃなく、父のを借りた方がお金がかからない。なので、父に借りれるか訊いてみよう。 「父さん」「何だ?」 父は読書中なので、邪魔されるとイライラするようだ。「父さんの持ってる啓発本貸してくれない? 同じ本がネットにあって」 そう言うと父は眉間にしわを寄せた。「汚すなよ、貸すのはいいが」 僕は笑ってしまった。「大丈夫だって」「ならいいが」 父は書斎に向かった。僕の家は父がやり手の事業主で、新築したくらいだから結構儲けていると思う。  書斎から戻ってきた父は貸してくれた。「ありがとう! 今、読んでる小説読み終わったら読むわ。それでもいいしょ?」 父は普段からあまり笑わないがこの時は僕と話して嬉しかったのか、笑顔を浮かべていた。「読んだ感想も教えろよ。貸してやったんだから」「うん、わかったよ」 そして、父はまた読書を再開した。                             つづく……
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