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「吊り橋効果」
その言葉を聞いて、心臓がキュッとなる。
「もしかして期待してる?」
じっと見つめる熱い視線に、オレは耐えられない。
「な、なに言ってんだよ。お、お前の方こそ、意識してんのか? 吊り橋効果期待してんの、根岸の方じゃねーの?」
あぁ! 口が! オレの口が勝手に言ってしまった! 売り言葉に買い言葉ってやつだよ。本心じゃないんだよ〜!
「はぁ?」
ほら……根岸が引いてるじゃんか。自己嫌悪。
「もういいよ、なんでもない!」
テンパってるところを見せたくなくて、背中を向けてこの場から去ろうとした。せっかく勇気出して誘ったのに。
……と、踏み出そうとした一歩手前。
「いいよ」
背中の向こうから、根岸の声がする。オレは目をまんまるくして振り向いた。
「マジで?」
「ブッ。立石の顔おもしろい」
「うるせー」
教室は騒がしくて、誰もオレたちの会話を気に留めるやつはいなかった。
「吊り橋効果、試してあげようか」
からかうようにニヤニヤする根岸の頬にできるえくぼが、たまらなくかわいい。
「バーカ。ドライブしたいだけだよ」
言い捨てるとすぐに背中を向けた。やばい。顔がにやける。本当に、嬉しい。週末が楽しみだ。
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