吊り橋効果の検証

2/13
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「吊り橋効果」  その言葉を聞いて、心臓がキュッとなる。 「もしかして期待してる?」  じっと見つめる熱い視線に、オレは耐えられない。 「な、なに言ってんだよ。お、お前の方こそ、意識してんのか? 吊り橋効果期待してんの、根岸の方じゃねーの?」  あぁ! 口が! オレの口が勝手に言ってしまった! 売り言葉に買い言葉ってやつだよ。本心じゃないんだよ〜! 「はぁ?」  ほら……根岸が引いてるじゃんか。自己嫌悪。 「もういいよ、なんでもない!」  テンパってるところを見せたくなくて、背中を向けてこの場から去ろうとした。せっかく勇気出して誘ったのに。  ……と、踏み出そうとした一歩手前。 「いいよ」  背中の向こうから、根岸の声がする。オレは目をまんまるくして振り向いた。 「マジで?」 「ブッ。立石の顔おもしろい」 「うるせー」  教室は騒がしくて、誰もオレたちの会話を気に留めるやつはいなかった。 「吊り橋効果、試してあげようか」  からかうようにニヤニヤする根岸の頬にできるえくぼが、たまらなくかわいい。 「バーカ。ドライブしたいだけだよ」  言い捨てるとすぐに背中を向けた。やばい。顔がにやける。本当に、嬉しい。週末が楽しみだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!