【真鍮とアイオライト】5th 司書Iの日常 流星群?後日談

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 以前、 「図書館司書って暇なときは本読んでればいい仕事なんでしょ? 楽そうでいいよね」 と、言われたことがある。  それを俺に言った人には全く悪意がなかった。ように見えた。  本当のところ嫌味だったのかもしれないけれど、少なくとも状況的には俺を不快にさせて彼にいいことなんて一つもないような状況だったから(簡単に言うと理容師さんと客というシチュエーション)多分、天然で空気が読めない人だったんだろう。  少なくとも俺は非常に不快だった。  正直カチンときた。  図書館司書が仕事中に本を読んでいられる時間なんて(少なくとも俺のいる図書館では)殆どない。あったとしても、読書を楽しんでいるわけではないので、楽ではない。  ただ、利用者さんから”何もしていない”ように見える時間ってのは、そこそこにあるような気がする。  何故なら、図書館っていうのは、基本客商売だからだ。スーパーマーケットにピークタイムってのがあるように、図書館にも利用者さんが大量にやってくるピークタイムがあって(それが何時なのかは多分各図書館によって違うけれど)ピークタイムがあるってことは、アイドルタイムがあるってことなんだ。  つまりは、利用者さんがいない時間。  そんな時間には、確かに読書をしていたいと思わないでもないけれど、実際には返却された本の中の忘れ物や、汚損破損の確認やら、消毒やら、PCのデータ上の返却処理確認やらやることはたくさんある。  それでも、なお、確かにあるんだ。  暇な時間。  何もしてない時間。  ただし、本を読んではいられない。利用者さんが声をかけにくくなってしまうし、本の内容を追っていたら、利用者さんに気付かないかもしれないからだ。カウンターに立って、いつでもお声をかけてください。お役に立ちますよ。って、顔をしているのも大事な仕事なのだ。  と。前提として長々と話してきたのだが、簡単に言うが、今。まさに暇だった。  金曜日の昼過ぎ。俺のいる地方の市立図書館では、嘘みたいに誰も利用者さんが来ない時間が訪れる。 もはや、立ったまま寝られそうなほどに暇だ。
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