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ガラスの短編
ガラスの短編
高層ビルの中央に、ドーナツ状の空洞があり、空の見える中庭となっていた。向かい側には、ガラス張りの休憩室が、日常を映し出している。
自販機で缶コーヒーを買う猫背青年。
椅子に座り長く話しこむ女性たち。
頬杖をつきぼんやり考えごとの猫と紳士。
円テーブルに立ち煙草を吹かすそれぞれの輩。
各階の休憩室を眺めると、ガラスの短編が現れては消えてゆく。
漫画の吹き出しがあれば、言葉を入れて、喜怒哀楽・起承転結の展開、ことの顛末を、自由気ままに考えずにはいられない。
透明な短編はどこにでも転がり巡り、特別に仕立てた一日でなくとも、日常に息を吹き返す萌しを、無意識に待っている。
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