審判の日

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審判の日

「もう終わりにしてもいいのかもしれない」 「そうだな、そうかもしれない」 「あまりにも人は勝手ではないか」 「そうだな」 「人は平気で自然を壊す」 「人が快適に暮らすために」 「人の欲望のために」 「例え他の生き物が滅びようとも」 「人のせいで、住処を追われたり、滅んだりし  た生き物は、どれほどいるのか」 「戦争をして、殺し合う」 「自分の利益のためなら、平気で同族でも殺し  てしまう」 「親も、子も、兄弟も、祖父や祖母も、赤子ま  でも」 「強者が弱者を虐げる。虐めや、暴力も後をた  たない」 「他人の物を奪う」 「物や金、地位や名誉」 「人の恋人や、人の妻、人の夫、平気で人の物  を奪う」 「奪われたら怒り、悲しみ、絶望するくせに」 「人がいなければ、世界は平和だったかもしれ  ないな」 「じゃあ、何で人を造ったのですか?」 「何でだろう?」 「遥か昔、太古の地球」 「ただ食べて、寝て、子を生して、死んでい  く」 「延々と繰り返される営み」 「そこには何の変化もない」 「とこしえの平和」 「何千年も、何万年も、何億年も、連綿と続い  ていく」 「平和だけど退屈な世界」 「そんな世界に変化を望んだのは、誰か」 「それは他の誰でもない、神よ、あなただった  のではありませんか?」 「人に知恵を与え、感情を与えた」 「知恵」 「火を扱い、言葉を覚え、道具を作り、文字に  して知識を伝えた」 「そして、人は遠くへ行くための術を得た」 「感情」 「喜んだり、怒ったり、哀しんだり、楽しんだ  り、笑ったり、泣いたり」 「そして、人は遠くへ行くための情熱を得た」 「遠くへ、遠くへ、遠くへ、遠くへ」 「人は、もう、こんなところまで来てしまいま  したよ」 「さあ、今日は、審判の日です」 「神よ、どうなさいますか?」 「おしまい」
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