この世界は

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 2放課後の図書館にて  「うーーーん」  僕が唸り声を上げているのを見て、周りの小学生がそそくさとにげる。(そそくさ、は死語だっけ?)僕はまたため息を吐き出す。  その時、僕の前にガコンと栄養ドリンクが置かれる。顔をあげると、そこには僕の片菱ユウキが立っていた。  僕は、片菱の事を、あまり知らない。というか、あまりどころじゃなく、かなり知らない。男女か、どこに住んでいるのか、全くの謎だ。そんな僕に向かって、片菱が口を開く。 「疲れてるんだろ、飲め。」  この女とも男とも取れる声、ますます謎は深まる。  更にうなり始めた僕に向かって、片菱がいささか心配そうな目を向ける。 「大丈夫か?」と片菱が聞いてくる。かろうじて「大丈夫。」と返すと、片菱は微笑んで「ならいいんだ。」と言う。僕は、片菱のすきを狙って目の前の栄養ドリンクのキャップを開け放とうと企む。  一方、片菱は僕の企みを遮るように栄養ドリンクをグビグビ飲む。そして「っぷは〜」とおっさんのような声を出して帰っていった。  ふと見ると、僕の前にメッセージ入り栄養ドリンクがおいてあった。メッセージには、「お前の国語の評価先生が2か3で迷ってたぞ」と書いてあった。  僕はそっと涙を拭う。  さあ、気を取り直して、この世界について考えようじゃないか。まず、この世界のことを知るには平行世界について知らなきゃいけないと思う。僕は図書館のパソコンの前に行き、「平行世界」と打つ。短い間でも、僕の指がキーボードの上で踊る。  検索結果は何件かあったが、いいのはなかった。ということは、自分の頭で考えろということじゃないいかと思う。僕は机に向かう。
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